政府は、全国を対象にしていた新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態宣言を、39県で解除した。新規感染者がゼロ、または減少している状況を踏まえたもので、政府や自治体の要請に協力した市民の行動の成果と言える。安倍晋三首相も記者会見で「新たな日常を取り戻していくスタート」と強調、各県は社会経済活動の自粛を段階的に緩和していく方針だ。

 しかし、特効薬やワクチンが開発されていない上、特定警戒地域の東京都などでは依然2桁台の新規感染が確認されており、ウイルスとの闘いが終わったわけではない。多くの専門家は第2波の到来を予測する。

 再び感染拡大の兆候が表れたら、ちゅうちょなく後戻りする、自粛と緩和の繰り返しは避けられないかもしれない。私たちはしばらく、コロナと付き合っていく覚悟を持ち、制圧まで影響を最小限に抑える社会をつくっていくほかない。

 まず、感染が一定程度落ち着いた時間的な猶予を利用して、医療体制を再構築する必要がある。

 重症者の救命を最優先に、各地の病院の役割分担を一層進め、病床を整備、疲弊する保健所の機能を立て直す。人的にも装備面でも、医療資源を確保する予算を惜しむべきではない。38度台の発熱がありながら、受け入れ先が当初見つからなかった大相撲力士のようなケースは絶対に防がなければいけない。

 また、感染再拡大の端緒をつかみ、完全な「出口」を模索するためには、PCR検査や抗原検査の拡充に加え、幅広い抗体検査による疫学調査も不可欠だ。

 「自粛疲れ」から解放されたい気持ちは分かるが、緊急事態を解除した地域でも、かつての行動に戻るのは慎重であるべきだ。「3密」の回避、手洗いの励行、マスク着用、店舗や公共施設のこまめな消毒など、身近な衛生環境づくりを実践したい。肝心なことは、感染しない、感染させないという一人一人の意識の徹底である。

 それでもクラスターが発生しやすい業態は存在する。解除しても経済活動が元通りになるには時間もかかる。事業者の破綻を食い止めるのも、政治や行政の使命であり、前例にとらわれない発想や予算措置が求められよう。この間、自治体が現場の悲鳴をくみ、国の対策より先行した例もあった。地方の取り組みを国が財政的に支える臨時交付金を大幅に増額すべきだ。

 今回の宣言解除では、「10万人当たりの新規感染者0・5人未満」などの目安を設定した。ただ、大阪府などでは、既に独自の数値目標を掲げている。さまざまな数字の併存によって、社会の混乱を招いてはならず、政府や自治体は丁寧に説明してほしい。

 コロナとの長期戦に臨む上で、大切なのは行政と市民の信頼関係だ。そのために必須なのは、行政側のきめ細かな情報開示である。厚生労働省は指導力を発揮し、自治体によってばらつきのある公開基準を、医療体制も含め、誰でも実態を把握できるよう、全国的に統一すべきではないか。

 ここまでの政府の対応は、後手に回ったとの批判が付きまとい、世論の視線は厳しい。為政者に必要なのは、立場の違う人たちの意見にも耳を傾け、取り入れる謙虚さと、言葉だけではない決断のスピードだ。(共同通信・橋詰邦弘)

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