「トリスを飲んでハワイへ行こう!」。昭和36(1961)年、流行語にもなった寿屋(現サントリー)のキャンペーンは、8日間でハワイ5島を巡る旅が100人に当たった。まだ海外渡航が自由化される前で、すぐに出発できるわけではなく、代わりに約40万円分の「旅行積立預金」の証書が当選者に贈られた◆ところが、やっと海外へ行けるようになった3年後、実際に旅行に出かけたのはわずか4人。残る当選者のうち、名乗り出た60人は現金で受け取った(『時代を映したキャッチフレーズ事典』)。高度成長の登り坂を歩み始めたころ、あこがれより今日の暮らしに追われていた世相が透けて見える◆新型コロナ対策の一律10万円の給付金は「普段の食費」や「日用品購入」に充てようと考えている人が多いらしい。民間調査会社クロス・マーケティングのネット調査では「消費や支払いに回す」という回答が7割に上った。一方で将来を案じてか、若い世代ほど貯蓄志向が強かった◆県内でも一部自治体で支給が始まった。マイナンバーカードによるオンライン申請が分かりづらかったにせよ、役所の相談窓口に大勢の人が群がる光景は、生活不安の高まりを映し出す◆こんな時に検察官の定年延長かよ、とテレビの前で晩酌も荒れる。ウイスキーに夢を浮かべた時代がうらやましい。(桑)

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