佐賀県高校総合体育大会(高校総体)の中止が決まった。1963年に始まって以来、中止は初めてという。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、生徒や指導者らの安全を最優先に考えた決断だが、目標を奪われた高校生たちの無念さは察するに余りある。

 県高校体育連盟(県高体連)は中止決定の理由として、「移動に伴う感染リスク」「休校などによる練習不足と事故発生の危惧」「5月末までの県内大会自粛要請」を挙げた。感染拡大の懸念が依然として払拭(ふっしょく)されていない中で、やむを得ない判断であったろう。

 コロナ禍の現状を冷静に受け止めなければいけない。県内では14日から学校が再開されるが、今後は密集など「3密」を避ける対策を取りつつ、夏休みの短縮や土曜授業などで授業時間を確保し、学習の遅れを取り戻すことになる。高校では、再度休校になった場合に備えて学校と生徒をインターネットでつなぐオンライン授業の導入を急ぐなど、多くの学校が綱渡りの運営を強いられるはずだ。

 こうした状況や、全国で県総体の中止決定が相次いでいたことを踏まえれば、佐賀県総体の中止もある程度、予想できたかもしれない。とはいえ、感染拡大の影響で、公式試合はもとより練習試合さえできず、このまま部活動引退の状況に追い込まれてしまう3年生たちは、やるせなさが残っただろう。こういった生徒たちの気持ちが置き去りにされることがないよう、学校や指導者には心のケアなどに努めてもらいたい。

 卒業後もトップレベルで競技を続けたい3年生にとっては、現実的な問題ものしかかる。春の全国高校選抜大会、8月の全国高校総体などが相次いで中止となり、大学のスポーツ推薦や実業団チームの目にとまる機会が奪われてしまった。10月に鹿児島県で開かれる予定の国体をはじめ、駅伝、サッカー、ラグビーなど年末年始の全国大会に出場できる可能性は残るものの、それも地区予選が開催されなければかなわない。

 2023年に国民スポーツ大会の開催を控える佐賀県はジュニアの強化を進めており、五輪出場を目指せるようなトップ選手が多く育っている。全国高体連は、3年生が成果を発表できる場を設ける取り組みを各都道府県の高体連に要望した。感染収束の見極めが前提となろうが、関係者はあらゆる可能性を探って開催可否を判断してほしい。同時に、大学や企業などと意思疎通を図り、夢の実現のために生徒を導いてもらいたい。

 感染症の専門家らは第2波、第3波の襲来を警告する。選手の健康をどう守るかという問題は、今年だけの単発的なものではなく来年も起こり得る。一朝一夕にさまざまな課題が解決できるわけではなく、長期的な視点からの改革も必要となろう。

 部活動の原点を考えてほしい。レギュラー選手もいれば、補欠や裏方に回ってチームを支える生徒もいる。ともに汗を流す中で、部活動は生涯の師や友を得る場にもなる。県総体の中止を受け、卓球のトップ選手が「3年間やってきたことは無駄じゃない。絶対に自分たちのプラスになる」と前向きな言葉を述べていたことに救われる。このつらい経験が生徒たちの成長の糧となることを願うばかりだ。(市原康史)

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