新型コロナウイルス感染を調べるPCR検査を巡り、厚生労働省は相談・受診の目安を変更した。従来の「体温37・5度以上」を削除し、軽い風邪症状が続けばすぐに相談するよう求めた。体温条件がネックとなり検査が受けられない問題点が指摘されながら、見直しまでに約3カ月を要した。

 国民の生命をいかに救うかという重大事だ。欧米諸国などに比べ極端に少ないままの検査数の問題と合わせ、政府は対応が適切だったか直ちに検証し、立て直すべきだ。加藤勝信厚労相は、従来の体温条件を保健所などがPCR検査や診察を受けさせる基準として扱っていた実態に関し「われわれから見れば誤解」と述べた。保健所を所掌する責任者として現場へのこのような責任転嫁は許されない。体温条件を見て相談を控えた国民もいたのではないか。誤解と言うなら、それを解く努力をどれだけしたか自らに問い直してほしい。

 厚労省は2月、「37・5度以上の発熱が4日以上続く」などの場合に保健所などの「帰国者・接触者相談センター」に相談し、検査や治療が必要と判断されれば専門外来の紹介を受けるとした当初の目安を公表。これは、軽症者の殺到による医療崩壊の防止を重視しつつ、重症者の治療を優先する狙いがあった。

 検査・医療体制が弱い初期段階としてはやむを得ない選択とも言える。しかし医療崩壊防止の大義の一方、軽症から急速に重症化する患者を救えなくなる矛盾が生じた。目安が分かりづらく、なかなか検査が受けられないとの批判も強かった。

 4月には埼玉県で50代、70代の男性2人が陽性と判明後、軽症として自宅待機中に容体が悪化し相次いで死亡。これを受け政府の専門家会議は相談・受診目安を、重症化しやすい高齢者や持病を持つ人に限り、従来の「2日程度続いたら」を「すぐにでも相談」に変更した。それでも「37・5度以上」の条件は維持。その後、神奈川、石川両県で死亡後に陽性と判明するケースもあり、ようやく目安変更に至った。

 検査・医療体制が初期より充実してきた以上、感染者を早期に広く把握する方向へもっと早く力点を移すべきだった。

 従来の目安は、1日2万件が目標のPCR検査件数が、多くてもその半分程度にしか達しない原因にもなってきたと考えられる。安倍晋三首相も「目詰まりや地域ごとの差がある」と述べ、体制が不十分だったと認めている。目安変更を検査拡大に確実につなげたい。

 緊急事態宣言の緩和や解除に向けた「出口戦略」の指標として重視すべきPCR検査の陽性率が、都道府県で集計基準にバラツキがあるため政府として全体の把握ができていない問題も合わせて改善を求めたい。客観的データで状況を可視化できなければ、流行の第2波、第3波も想定した対策に対し国民の理解を求めるのは難しくなる。

 政府は緊急事態宣言について、重点的な対策が必要な「特定警戒都道府県」以外の34県を中心に14日に解除を判断する方向だ。だが専門家会議は、その後も1年以上はワクチンや治療法が確立するまで再流行に備える必要性を強調している。

 PCR検査は再流行の予兆をとらえ抑え込む決め手でもある。いったん小康になった後もさらに検査体制を強化する必要があると認識すべきだ。(共同通信・古口健二)

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