新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が延長され、休業要請を継続中の東京や神奈川、大阪、愛知など特定警戒都道府県でパチンコ店が続々と営業を再開した。マスク着用を呼び掛けたり、体温を測るカメラを設置したりする店もあるが、混雑により感染リスクが高まるとの懸念は拭えず、各自治体は対応に追われている。

 特措法は協力の呼び掛けに応じようとしない事業者に国との協議を経て、より強い行政指導に当たる「要請」や行政処分の「指示」を行う権限を知事に与えている。事業者が正当な理由なしに要請や指示を拒めば、店名を公表することもできる。しかし休業を徹底させるのは容易ではない。

 指示に従わなくても罰則はなく、休業による損失を補償するのに十分な国の財政支援もないからだ。このため知事から罰則整備を求める声が上がり、西村康稔経済再生担当相も知事権限強化や罰則整備に言及。今後、法改正の議論が広がることも考えられるが、それが過剰な「私権制限」につながらないよう細心の注意を払う必要がある。

 ただ4月の緊急事態宣言後、パチンコ店の多くは要請に応じている。それを踏まえれば、営業を続ける一部の店により強い措置を取ることを考える前に他の業種も含め休業を後押しするため、要請とセットであることが期待されている補償の在り方について国は本腰を入れて検討すべきだ。

 特措法は知事に臨時の医療施設を開設するために土地、建物を強制的に使用したり、医薬品や食品など緊急の確保を要する物資を収用したりする権限も認めている。その上で「それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない」と定めている。

 一方、休業により発生する損失の補償に関する規定はない。施設の使用制限などの要請は国民の生命、健康保護の観点から講じられる▽感染症は1~2週間で終息するので一時的な措置▽国民全体が何らかの制約を受ける―といった理由から、補償を巡り突っ込んだ議論はなかったという。

 しかし外出自粛要請の中、軽症や無症状の人が街中を動き回り、感染が広がるという想定外の事態もあり、緊急事態宣言は長期化した。さらに13の特定警戒都道府県以外の34県で地域ごとの宣言解除も視野に入ってきたとはいえ、感染まん延の第2波に警戒を怠れないと専門家は指摘する。

 先々まで見据えた対応が必要だろう。休業要請に反旗を翻した形のパチンコ店は中小、零細が多い。休業すれば国の持続化給付金や雇用調整助成金、自治体の協力金などでしのぐことになるものの「店を閉めれば、つぶれる」「雇用を維持するため営業を続ける」などの声が後を絶たない。

 また協力金は自治体の財政力によって格差が生じる。そうした事情は飲食店など他の業種でも変わらない。長期戦に備える意味でも、休業要請を巡る国の責任を明確にした上で、全国で統一的な補償を行う枠組みを整えることが求められる。

 自民党などからは、大規模災害時に内閣の権限を強化する緊急事態条項を憲法に新設すべきだとの声も上がっている。だが今は感染防止に集中し、憲法にのっとり個人の自由と権利への制約を最小限に抑えながら、いかに対策の実効性を確保するかが問われている。(共同通信・堤秀司)

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