営業を再開する武雄タクシーに取り付けられたお手製の感染防止のビニールシートの仕切り

 運転手の新型コロナウイルス感染により営業を休止していた武雄市の「武雄タクシー」が11日、営業を再開する。自主的な休業と社名公表から2週間。不安を募らせる乗客への説明を重ね、従業員は行動自粛を続けた。感染の拡大はなく、営業を再開するが、風評被害の懸念はぬぐえず、心境は複雑だ。

 「PCR検査で陽性になりました」。4月28日夕、会社に運転手から電話があった。牛島眞澄社長は稼働している運転手全員を本社に呼び戻し、すぐに営業を休止すると伝えた。

「社名は不可欠」

 その日のうちに保健福祉事務所が、運転手の勤務状況や接触者を調査に来た。濃厚接触者にあたる社員はなく「休業の必要はない」と説明を受け、社名公表も問われたが、社名を明らかにして休業する考えは変わらなかった。

 牛島社長は30日、「感染を広げる可能性が全くないとは言い切れなかった。不安になる人が必ずいるから、社名を出すのは不可欠。他社にも迷惑がかかる」と理由を話した。

 感染した運転手は23日午前2時まで勤務。その後は休みだったが、25日に発熱を連絡してきた。念のため日報などで最近の乗車状況を調べていた。濃厚接触者の定義は「発症2日前」。22日から23日未明までの乗客5組を把握し、保健福祉事務所から連絡が入ることを伝えた。全員が検査を受け、陰性だった。

 運転手の感染が公表された29日から数日間は「乗ったけど大丈夫か」「勤務日を教えて」などの問い合わせが1日に10件程度寄せられた。運転手の名前を把握している人もいた。

 4月10日以降の乗客はほぼ把握できたので、該当しないケースは伝え、社内に濃厚接触者がいないことも説明した。髙田伸介業務課長は「不安を少しでも解消してもらいたかった。『22日の乗客以外は保健福祉事務所も調べていないので大丈夫』としか言いようがないこともあった」。

「被害者なのに」

 「どこから感染したのか」と厳しい口調の電話はあったが、中傷はなかった。励ましの電話も数件あった。ただ、社員の家族が仕事先から出勤自粛を求められたケースは複数ある。髙田課長は「被害者なのに加害者みたいな気持ちになった」。

 運転手27人と事務職員10人は行動自粛を続けた。体調不良の報告はない。営業再開に向け、全車両を消毒し、突っ張り棒とビニールシートで前後の座席を仕切るお手製の感染防止シートを取り付けた。

 髙田課長は「営業再開はうれしいが、風評被害などいろいろな影響も覚悟している。感染した運転手が復帰した時、拒絶などの心ない行為がなければいいが」と心配している。

 

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