緊急事態宣言直前に東京でカフェをオープンした伊豆味さん(右)。カフェメニューを弁当販売に切り替えて営業している=東京・高円寺南のベアーズカフェ

 カフェをオープンしたのは、緊急事態宣言が発令される1週間前だった。嬉野市出身の伊豆味美和子さん(28)=旧姓・藤田=は4月1日、東京杉並区のJR高円寺駅近くに店を出した。宣言を受けカフェメニューは休止し、佐賀県産野菜をふんだんに使った弁当のテークアウトに切り替えたところ好評で完売が続く。「赤字覚悟」で臨むが、「テークアウトだから知り合えたお客さんも多い」と前向きにとらえコロナ禍を乗り切ろうとしている。

 高円寺エトアール通り商店街の「占いスナック」の店舗を昼の時間帯に借り、「ベアーズカフェ」を開いた。佐賀県の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、嬉野市の吉田焼で食器をそろえた。県内から週1回、野菜を仕入れる。

 4月7日に宣言が発令され、カフェメニューは1週間で休止に。「産地直送、佐賀の野菜」。黒板に大きく書いて、店先で弁当販売を始めた。魚と肉の2種類を用意し、1個850円。できたてを食べてもらうのと異なり、「冷めてもおいしく作るのは難しかった」。想像もしていなかった船出。「こんな時だからこそ日々の癒やしになれば」という思いで仕込む。

 テークアウトに専念したところ、「店に入るより気安く寄れる」という客で日に日ににぎわうようになった。近くに住む男性(69)は「玄米も野菜も健康的でおいしい」とほぼ毎日通う。伊豆味さんは「テークアウトにしないと出会えなかったお客さんがたくさんいる」と話す。

 高校時代から自分の店を持つことが夢だった。卒業後、服飾系の専門学校に通うため上京。カフェに関心が移り、都内の飲食店で経験を積んだ。昨年6月からレンタルスペースで月1回カフェを出店するなど準備を進めてきた。「お客さんがくつろぎ、自分らしくいられる場所に」。4月の開業は、10年来の夢を一つの形にした瞬間だった。

 現在、客との会話は弁当受け渡しのわずかな時間に限られる。「自分も九州出身です」「こんな状況だから、がんばりましょう」。マスク越しにエールを交わす。癒やすつもりが、癒やされる。「お弁当を買ってくださるお客さんに、いつか店内でゆっくり過ごしてもらいたい」。マスクを外して、客と他愛のない会話ができる日を待ち望む。

 営業時間は午前11時から午後6時。電話050(3196)2304。

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