依頼を受けて修理した足踏みミシンを取り付ける川副薫さん=佐賀市

 文字通り20年以上“お蔵入り”になっていた足踏みミシンが、軽快な音を立てた。修理を頼んだ佐賀市の女性(68)は「まさか、使えるようになるとは思わなかった。孫のために作るマスクの厚い部分も、これだったら大丈夫」と声を弾ませた。

 分解修理をしたのは、ミシンの販売や修理を50年ほど手掛ける「川副ブラザー販売」の川副薫さん(72)=佐賀市大財。「4月以降、急激に修理の依頼が増えた。こんなに忙しいのは初めて」

 使い捨てマスクが手に入らないなら、布マスクを作ろう―。新型コロナウイルスの感染拡大で、そんな機運が高まる。ただ、すぐに新しいミシンは品薄になった。「あの辺かな、と倉庫や押し入れを探して見つけ出したミシン。お嫁入りの時にとか、親から受け継いだとかで、50年以上前の品もありますね」

 修理するミシンは、午前中だけで4、5台持ち込まれる日もある。簡単なものはその場で、手が掛かりそうなら預かる。佐賀市内のほか鹿島市、武雄市、三養基郡…。口づてで広がり、県内各地から依頼が寄せられているという。

 春は、保育園や幼稚園の入園準備などでミシンの需要が高まる季節。そうはいっても、仕事に追われるほどではなく、例年とは違う差し迫った空気に複雑な思いを抱く。「新型コロナの終息後には、マスクではなく、身の回りの物を作る楽しみにつながるように」。そんな願いを込め、修理を続ける。

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