交通量も人通りも少ないJR新宿駅前=4日午後

 緊急事態を早期に脱するため、政府が目標に掲げた「人と人の接触8割削減」は達成できなかった。企業はテレワークを進めたが、主要駅の人出減少は時間を要し、外出自粛の中でもスーパーや公園などの生活圏では想定外の「密集」が生じた。専門家は、政府のメッセージが不明確で、危機感の浸透スピードが遅かったと指摘する。

 経団連が4月14~17日に実施した会員企業へのアンケートによると、97・8%がテレワークや在宅勤務を導入していると回答した。だが実際に、テレワークをしている従業員の割合が7割以上と答えた企業は52・4%にとどまった。

 テレワークには、パソコンやネットワーク環境などが必要で、設備が乏しい中小企業は対応が難しい。企業の危機管理に詳しいコンサルタントの田中優介さんは「大企業より中小企業で働く従業員の方が数が多く、8割削減はそもそも厳しい目標だ」と指摘する。

 安倍晋三首相は繰り返し「最低7割、極力8割の接触削減」を訴えてきた。ただ、中央大の佐々木信夫名誉教授(行政学)は「削減が必要と理解できても、具体的にどう行動すれば達成できるのか分からない。国民の多くがこうした感覚だったのではないか」とする。

 休業要請や補償を巡り、政府の対応が後手に回ったことが要因との見方もある。関西大の亀井克之教授(リスクマネジメント論)は「宣言後も変わらず営業している店があり、住民や事業者からすれば、どこまで自粛を徹底すべきか、曖昧な状況に置かれた。しばらくたってようやく危機感が出てきた」。

 緊急事態が5月末まで延長され、特定警戒都道府県などでは引き続き外出自粛を求められるが、生活や健康を維持する面から完全な巣ごもりは難しい。亀井教授は「密集を避けてと言うだけでなく、例えばフランスのように『外出は1日1時間まで』と訴えるなど、もっと分かりやすく伝えるべきだ」と強調した。【共同】

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