ユーチューブで配信された左半分が改憲派、右半分は護憲派のネット中継の画面

 憲法記念日の3日、佐賀県内の改憲派や護憲派が開いてきた集会は今年、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、いずれも開催が見送られた。新型コロナ対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言で、憲法が保障する移動や集会などの自由は制約され、営業の自由などの私権も制限を余儀なくされている日常がある。

 「今年は東京での護憲派の訴えをネットで見ることになる」。佐賀市での講演会を中止した県平和運動センターの石橋正純議長はこう説明した。宣言の発令期間中は、大勢の人が集まるイベントの自粛が求められている。「現行憲法の大切さを再認識する上で集会を開くのは重要だが、やむを得ない」と声を落とす。

 同様に集会を見送って改憲派のネット中継の視聴を呼び掛けた日本会議佐賀。佐々木晶事務局次長は「年に1回、今の憲法で命や生活を守ることができるのか問題提起をする機会になっていたが…」と残念がる。

 感染症対策として異例の自粛が長引く中、社会運動への影響を懸念する声もある。4月下旬に予定していた2千人規模のメーデーの集会を中止した労働団体の連合佐賀。街宣カーやCMなどでの啓発に切り替えたが、反応はつかみにくい。井手雅彦会長は「労働者の権利や団結権などの大切さに触れてもらうためにも、集会は重要な意味を持つ」と感染終息を強く願う。

 飲食店が集まる佐賀市中心部の愛敬通りでは4月下旬、大半の店の入り口に「県の要請で休みます」などと、休業や営業時間の短縮を伝える案内が張り出された。休業要請は営業の自由を制約する側面があるが、経営者の70代男性は「感染予防となれば、仕方がない」とあきらめ顔だ。

 憲法では、財産権の規定の中に、土地収用など私有財産を制限する場合には正当な補償が必要とうたっている。それでも政府は、休業要請などに伴う全面的な損失補償には後ろ向きな姿勢を見せる。感染症対策としての制約や制限がどこまで認められるのかという議論が、特措法改正の際に十分に深まっていなかったため、歯切れの悪い対応になっているとの見方もある。

 人権問題に詳しい佐賀大学の吉岡剛彦教授(法哲学)は「命や安全と自由、人権が天秤てんびんにかけられ、多くの人が『まずは安全確保』と思っている。安全とプライバシーに関わる監視カメラと同じような問題で、自由や人権が脅かされているのに痛みを感じず、『これはこれでいいのではないか』と思ってしまう恐れがある」と危惧する。

 一層の強制的な措置を求める声もあるが、感染終息後を見据えると、危うさをはらむとみる。「『ウイルスが消えて、権力だけが残った』ということにならないように、さまざまな権利が制約を受けていることに自覚的でいようと努めることが、ひとまずの対処法ではないか」

 

■「理性的な議論必要」県弁護士会長談話

 憲法記念日に合わせ、佐賀県弁護士会(富永洋一会長)は「新型コロナウイルスと人権制限を考える」と題した会長談話を出した。新型コロナウイルス特措法の問題点を指摘し、憲法改正論議に関しては「ウイルスの恐怖に流されることがなく理性的な議論が必要」と求めている。1日付。

 談話では、特措法は運用次第で企業活動や国民の権利の過剰制限につながるとしつつ、「権利の制限は『命を救うために不可欠』といえる場合に必要最小限度においてのみ許容されることを肝に銘じる必要がある」と訴えている。

 自民党の改憲案に含まれる緊急事態条項の新設については、「ひとたび行使されれば立憲主義が損なわれ、回復が困難となる恐れがある。安易な議論は絶対に避けなければならない」としている。

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