感染者が病院関係者であるとのデマを否定する山口病院のホームページ。地元のケーブルテレビでも同様の文面を流した

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、佐賀県内でも中傷や風評被害が起きている。伊万里市ではデマを発端に、同じ職場の人やその家族までもが中傷や偏見にさらされ、職員の感染が確認された嬉野市の病院の関係者も差別的な行為を受けており、心を痛めている。

 「本当に怖い思いをした。憶測で情報を広めることが、どれだけ多くの人を傷付けることになるか知ってほしい」。伊万里市新天町にある山口病院理事長の藤邑(ふじむら)葉子さん(62)は訴える。

 3月31日、佐賀県が県内2例目の感染者を「伊万里市の60代女性で、福岡市に住む30代男性医師の母親」と公表した。「山口病院の藤邑さんでは…」。デマはその日のうちに広がり始めた。年代が一致し、20代の息子が佐賀県内の病院で研修医をしていることなどから類推されたようだ。

 「おたくやろ」。翌日以降、病院に問い詰めるような電話が十数件かかってきた。患者からも聞かれた。いくら否定しても「かん口令が敷かれとるとやろ」。来院者や運営する介護施設の利用者が激減した。

 風評被害は、職員やその家族にも広がった。看護師の子どもは保育所で他の園児と離された。入院患者や通所者の家族が、職場や塾に「来ないでほしい」と言われたという話も聞いた。

 藤邑さんは、地元のケーブルテレビで20日間以上「当院職員の感染ではございません」などと書いた静止画像を放送した。来院者に説明し、関係者には文書も送った。元気で健在だということをアピールするため、できるだけ外を出歩いた。市にも相談した。「やれることは全部やろうという思いだった」

 外来事務職員の感染が確認された嬉野医療センターの看護師も差別的な扱いを受けた。買い出しに出掛けた店の駐車場で、車のダッシュボードにセンターの駐車証を置いていると「近寄らないで」という感じで手を払うそぶりをされた。別の店でも同じようなことがあった。

 看護師の母親は「娘は外出も、人との接触も最小限に抑えている。私も娘の家に食料品を届けても、会わずにドアノブに掛けて帰る。感染者が出た直後は病院にも非難の電話が多かったと聞く。医療従事者が、家族を含めて感染拡大を防ぐために必死に頑張っていることを分かってほしい」と話す。

 ナイトクラブで県内初のクラスター(感染者集団)が発生した武雄市は、職員がネットパトロールを重ねている。悪質なケースは把握していないが、感染者が確認されると「だれ」「どこの人」と、必ず電話がかかるという。対策本部は「県からは人を特定するような情報は入らないので『情報がない』と伝えるが、怒る人もいる。仮に知っていても教えることはない」と強調する。

このエントリーをはてなブックマークに追加