安倍晋三首相は新型コロナウイルス対策で発令した緊急事態宣言を期限の6日から延長する方針を決め、全国を対象に1カ月程度延長する方向で調整に入った。

 政府の専門家会議も、逼迫(ひっぱく)している医療の現状から、1カ月間の延長が必要だとの認識で一致、徹底した行動の自粛を継続するよう提言した。

 外出を控え、多くの事業者が休業を余儀なくされる厳しい状況がさらに続くことになる。だが、感染症の拡大を食い止め、平穏な日常生活を取り戻すために、私たちも取り組みを徹底したい。

 ただ、先行きが見えないままでは「自粛疲れ」でストレスがたまり、事業者は今後の計画が立てられず苦悩が深まる。どういう状況になれば宣言を終結するのか。そのために何に集中的に取り組むのか。政府には、これまでの対策を検証した上で、明確な出口戦略を示すよう求めたい。

 国内で確認された感染者数は1万4千人を超え、亡くなった人も約500人に上る。専門家会議は、1日当たりの新規感染者数は減少傾向にあるとしながらも、「医療現場の逼迫状況は解消されていない」と指摘した。

 何よりも避けなければならないのは医療体制が崩壊する事態だ。安倍首相は「ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」と述べた。政府は医療現場への徹底した支援策に取り組むべきだ。

 この間の政府の対応は後手に回ったと言わざるを得ない。宣言は当初、東京など7都府県を対象としたが、9日後に全国に拡大する事態となった。事業者への休業要請を巡っても自治体との意思疎通に齟齬そごがあった。感染の有無を調べるPCR検査数は、首相が表明した1日2万件まで達していない。

 感染経路がたどれない感染者が増え、市中感染の懸念は拭えない。徹底した検査に基づく説得力のあるデータが示されていないことが、国民の不安につながり、一方で、危機感が十分に共有されない要因になっているのではないか。事態の後追いに終始する対策では効果は望めない。戦略を練り直す必要があろう。

 専門家会議の提言は、今後の緩和の条件も示し、新規感染者数を一定水準に抑えるのに加え、迅速に対応できるPCR検査や役割分担を明確にした医療提供体制の構築などを挙げた。

 政府は提言を基に、宣言終結の具体的な判断基準を示すべきだ。地域の感染状況の違いに応じた対策を示す必要もある。目標となる基準が明確であれば、私たちの日頃の心掛けの指針にもなろう。

 同時に、厳しい状況にある人々や事業者を支援する追加措置を早急に講じるべきだ。約1カ月間の宣言延長で、さらに生活が苦しくなる人や事業者が増えるのは確実だ。2020年度の補正予算では不十分で、中小事業者の家賃の支払いや学生の学費負担などの課題が新たに浮上している。2次補正の編成は必至だ。政府、与野党で協議を急いでもらいたい。

 大型連休中に移動する人は減ったとはいえ、観光地に行く人はまだ多い。休業要請に応じないパチンコ店もあり、西村康稔経済再生担当相は罰則規定を加える新型コロナ特措法の改正も検討する考えを示した。権利の制限を最小限度にとどめながら、どう対処するのが効果的なのか。立法措置を担う国会の責任も重い。(共同通信・川上高志)

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