一律10万円の給付をはじめ緊急経済対策の財源を盛り込んだ2020年度補正予算が成立した。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大と全国への緊急事態宣言に伴い、営業できない店舗の家賃や学費の支払いなど新たな問題が浮上している。政府には補正成立に安心することなく、これら切迫する次の支援の実現を急いでもらいたい。

 歳出総額約25兆7千億円の補正予算の柱は、国民に一律10万円を給付する費用約12兆9千億円をはじめ、中小・小規模事業者の資金繰り支援として約3兆8千億円、同じく事業者を対象とした最大200万円の給付金で約2兆3千億円などだ。

 いずれも生活や事業で困難に直面する人々には欠かせない支援であり、早急に行き渡る必要がある。ところが実現は大半が早くて5月の連休明けになる見通しという。

 対策作りの本格化が3月下旬だったことを考えると、著しく迅速さに欠けると言わざるを得ない。この間、個人への給付金を巡り補正組み替えの混乱があったことが一因だ。安倍晋三首相は国会で「各種給付金を一日でも早くお届けできるように、あらゆる運用面での工夫を講じていきたい」と強調した。今こそ有言実行を示す時だ。

 補正成立で遅ればせながら実行に移る緊急対策だが、問題点が少なくない。まず柱である個人向けの給付金だ。

 国民一律に10万円へと変更したせいで、勤務先の休業などで収入が大きく減った単身や2人世帯には受給額が減るからだ。当初の給付案は1世帯に30万円だった。困窮世帯にとって給付が遅い上に不十分な額ではたまらない。自粛要請の長期化が避けられないのであれば次の手だてを考えるべきだろう。

 他方、新たな焦点が中小事業者などに対する家賃支払いの支援だ。店舗などの賃料は営業を自粛している間も生じるため中小事業者には死活的な問題となっている。

 この点について野党は、政府系金融機関が一時的に家賃を肩代わりしたり、賃料を減額した物件所有者に国が補助したりできるようにする法案を共同で国会へ提出した。政府、与党は今回の対策に盛り込まれた中小事業者向けの無利子融資や給付金などで対応したい構えだ。

 商業用店舗の賃貸では借り手が多額の保証金や敷金を負担するのが一般的で、それらは貸主にとって家賃滞納などに備えた資金の性格がある。その点を考えれば支援はより借り手に負担の少ない方策が望ましいだろう。

 今後の支援ではほかにアルバイト先の休業などで収入が減少した学生の学費負担や、補正予算で1兆円を確保した地方自治体向け臨時交付金の増額が焦点になろう。時機を逃さぬ支援には、補正で措置された1兆5千億円の予備費の活用も柔軟に検討してもらいたい。

 今回の補正予算は、政府と与党がその気になれば、いったん決定した予算の組み替えが可能である点を明白にした。

 20年度当初予算は、コロナ禍が深刻化していたにもかかわらず修正されないまま3月末に成立。過去最大5兆3千億円余りの防衛費などに緊急性があるのか疑問に感じた国民は少なくない。

 国会は議員歳費の一時的削減といった「枝」でお茶を濁すのでなく、予算改革の「幹」に正面から取り組むべきである。(共同通信・高橋潤)

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