入り口に休館を知らせる張り紙を貼る旅館=佐賀市の古湯温泉

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、佐賀県内の多くの旅館やホテルが臨時休業している。この時期、いつもなら満室だった予約はほぼゼロで、営業するにしても感染の懸念は拭えない。「開けても地獄、閉めても地獄」―。異例のゴールデンウイークに、苦悩する業界の姿が浮かび上がる。

 「旅館によって経営方針や体力も違う。休館を決めた後は眠れなかった」。佐賀市の古湯・熊の川温泉観光コンベンション連盟の山口澄雄理事長は、加盟全施設で22日からの臨時休業を決めた時のことを振り返る。

 加盟は19施設。利用者の半数以上を占める福岡で7日に緊急事態宣言が出たことを受け、休業の検討を始めた。「感染者が出たら観光地として致命傷」「どうしても断れない予約がある」。さまざまな主張があったが、「一部が開いているとそこに人が集まる。全施設の一致団結が必要」と理解を求めた。3回の話し合いを経て休業が決まった。

 同様に、唐津市の呼子鎮西旅館組合(8施設)と藤津郡太良町の竹崎かに旅館組合(9施設)も一斉に休業している。「カニがおいしい季節で残念だが、命と健康が第一」と竹崎かに旅館組合。ある関係者は「感染を防ぐために開けないことが、地域を守ることにつながる」と苦悩を明かす。

 一方、嬉野など市部の旅館やホテルの中には、営業している施設もある。武雄市では観光協会会員の21施設のうち4施設、唐津市では78施設のうち25施設、嬉野市では温泉旅館組合加盟32施設のうち10施設が営業している。

 このうち嬉野市の旅館は「なじみの客も多く『来ないで』とは言えない。雇用を守るために日銭を稼がないといけないし、設備を何日も止めることはできない」と話す。県内を中心に1日当たり1、2組の予約が入っているという。

 ホテルや旅館は佐賀県の休業要請の対象外で、協会や組合で休業を強制することは難しい。原発や新幹線の工事関係者が長期間宿泊しているケースなど、さまざまな事情もある。

 休業の期間にも違いがある。緊急事態宣言期間の5月6日までや「当面の間」のほか、5月末までの施設もある。武雄市の関係者は「5月7日の営業開始はないだろう」とみる。「宣言解除は難しいだろうし、されたとしても旅に行く気持ちになるのか」と話す。逆に「休館は5月6日までが限界。経営が持たない」という悲痛な声も上がる。

 各施設の4月の売り上げは「半減なんてもんじゃない9割減」「宿泊だけでなく結婚式や宴会、法事までないから全く」という声が多い。武雄市の旅館経営者は「6月末までの休業状態は覚悟している。従業員を守るため雇用調整助成金を活用するなどしてしのいでいるが、長引けばとんでもないことになる」。(取材班)

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