新型コロナウイルスの感染者が世界で100万人を超えた。国際社会は対立や分断を乗り越え、人類史上最大級の危機の克服へ向けて結束しなければならない。
 感染者増加のペースは極めて速い。3月26日に50万人を上回って、1週間で倍増した。死者は5万人を超えた。3月に入ってイタリアを中心に欧州で感染が急加速し、今では米国が感染者が最も多い国となった。
 感染者の大半が中国だった2月まで、欧米諸国は対岸の火事と見ていた節があり、対応が後手に回った印象はぬぐえない。世界保健機関(WHO)は1月30日に緊急事態宣言を出し、3月11日にパンデミック(世界的大流行)の事態と表明するに至ったが、WHOの判断が遅かったという批判もくすぶっている。
 検証はいずれ必要だが、非常時に、責任を押しつけ合っている場合ではない。ウイルスを米国のトランプ大統領やポンペオ国務長官が「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼び、反発する中国外務省報道官がウイルスを米軍が持ち込んだ可能性があると主張するといった泥仕合は不毛だ。
 日本を含め全ての国が免れない危機であり、人類の連帯が不可欠であることを肝に銘じたい。
 グテレス国連事務総長は「世界は前例のない試練に直面している」として、アフリカなど医療体制が整っていない途上国への大規模支援を呼び掛けた。先進国でいったん感染を抑えることができても、途上国で流行が続けば再燃の可能性が消えず、終息までの闘いは長期化してしまう。
 また先進国も含め、子供や女性、低所得者、零細事業者など立場の弱い人々が取り残されないよう努力することを求めた。グテレス氏の訴えを強く支持したい。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の集計によると、日本を含む166カ国で全国的な休校措置が取られ、15億人以上の小中高の児童・生徒が授業を受けられず、教育の機会を奪われている。
 国際労働機関(ILO)は世界で仕事を失う人が2008~09年の金融危機の2200万人を超え、2500万人になる可能性があるとしている。
 パニックに陥った社会で差別や人権侵害が横行する恐れがあり、警戒が必要だ。各地で中国人や日本人が「コロナ」と呼ばれ襲われる事件が起きた。民族や宗教の対立が深まった地域もある。
 20カ国・地域(G20)の首脳声明は5兆ドル(約540兆円)超を世界経済に投入すると表明し、貿易投資相会合は医療や生活に不可欠な物資が各国に行き渡るよう取り組むことで一致した。医薬品の輸出禁止といった動きに歯止めをかけ、サプライチェーン(部品の調達・供給網)や物流ネットワークの維持に全力を挙げるべきだ。
 感染爆発の瀬戸際にある日本は現在、国内対策に追われている状況だが、日本外交は感染症対策など「人間の安全保障」を柱に掲げてきた。国際支援に最大限の力を尽くしたい。
 感染はいつ終息するか見通せないが、世界が結束して危機を乗り越えることができれば、国際協力は新たな段階を迎えるかもしれない。地球温暖化や感染症といった地球規模の課題に対処する力を高め、持続可能で強靱(きょうじん)な人類社会が生まれることを期待し、長い闘いに立ち向かおう。(共同通信・上村淳)

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