自民党の河井案里参院議員が初当選した昨年7月の参院選を巡り、案里氏の公設秘書で公選法違反(買収)の罪に問われ、検察に連座制の適用対象として「百日裁判」を申し立てられた立道浩被告の初公判が広島地裁であり、被告側は起訴内容の認否を留保した。検察は被告が選挙運動を計画・指揮する組織的選挙運動管理者とみている。
 この立場の人物が買収などに関わった事件は、受理から100日以内に判決を出すよう努めなければならないと公選法は定めている。立道被告の禁錮以上の刑が確定し、検察が起こす行政訴訟で連座制の適用対象と認定されれば、案里氏はたとえ事件に関与していなくても当選無効となり、失職。同一選挙区から5年間立候補できなくなる。
 車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとされるこの事件では、夫で前法相の克行衆院議員の政策秘書も起訴されている。さらに克行氏は案里氏陣営の選挙運動を取り仕切っていたとされ、地元政界などに現金をばらまいた疑惑も浮上。地検が県議や市議、首長ら多数を聴取し、関係先を家宅捜索している。
 そんな中、案里氏と克行氏は事件や自らの責任について、いまだに口を閉ざしたままだ。行方をくらまし、地元有権者や国民に対する説明責任から逃げ回り、政治活動もままならない。もはや国会議員の資格はない。夫妻は議員辞職すべきだ。
 1980年代後半から、政官界に値上がり確実な未公開株や献金がばらまかれたリクルート事件などをきっかけに「政治とカネ」の問題に批判が噴出。政治改革が叫ばれ、目玉の一つとして94年の公選法改正で連座制が強化された。総括主宰者や出納責任者、親族といった連座制の適用対象者に組織的選挙運動管理者や秘書が加えられ、立候補制限も導入された。
 この過程で、本来は無報酬の選挙運動において例外的に報酬支払いが認められている運動員の日当も1万5千円が上限とされた。30年近くも前のことで、今どき、この額では人が集まらないという不満の声も聞かれる。
 案里氏陣営の報酬はその倍だった。上限が低いというなら、国民に理解を求め適正な手続きを踏むべきで、立法府を目指す選挙で違反に手を染めることは許されない。
 克行氏は案里氏陣営内で「選対本部長兼会計責任者、街宣担当者」といわれ、買収事件への関与が捜査の焦点となっている。立道被告も当時、克行氏の秘書で当選後に案里氏の秘書になった。
 それだけではない。参院選前の昨年4月ごろから有力な県議や市議、首長、さらに後援会幹部や陣営スタッフに自ら現金10万~30万円を手渡し、支援を依頼。突き返した人もいるが、授受を認め辞職した町長もいる。また旧知の男性会社員に現金10万円を手渡し、票固めの見返りとして案里氏の政党支部から約86万円を振り込んだとされ、一連の授受が立件されれば、選挙後に法相に就任した政治家による前代未聞の買収事件となろう。
 克行氏は安倍晋三首相に近く、案里氏陣営は資金面などで党の全面支援を受けた。しかし首相は法相に任命した責任は認めても、説明責任を果たすよう求めることもなく、本人任せの姿勢に終始してきた。首相として、党として毅然(きぜん)とした態度を取り、けじめをつけることが求められよう。(共同通信・堤秀司)

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