新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大阪府は特別措置法に基づく休業要請に応じないパチンコ店の店名公表に踏み切った。これまでの一般的な協力呼び掛けでは思うように休業が広がらず、より強い対応に切り替えた。これによって休業に応じた店もあるが、いつもと変わらず営業を続ける店があり、他府県からも人が訪れている。

 府は24日と27日の2回に分け計9店の店名を公表。その後、休業した店はリストから外した。隣の兵庫県も27日に同様の措置を取り、東京都や茨城県など多くの自治体が後に続く方針を固めている。大型連休中に店内が混雑して密集、密閉、密接の「3密」の状態となり感染リスクが高まるのを避ける狙いがある。

 ただ店側にも言い分はある。大阪で営業を続ける店の事業者は従業員たちの雇用を維持するためと説明。国の資金繰り支援の対象外で、休業すると倒産するしかないと訴えた。経済産業省は24日になり、支援対象をパチンコ店などにも拡大すると発表したが、運用開始は連休明けとみられ、補償の出遅れが響いた。

 店名公表は自粛要請の域を出ないとはいっても、事実上のペナルティーを突き付け、休業を迫る強力な措置だ。「私権制限」を懸念する声も出ており、運用には慎重を要する。事前に事業者側から資金繰りも含め詳しい事情を聞き取るなど、より丁寧な手続きを検討する必要があるだろう。

 都道府県が事業者に休業を求める手続きについて、特措法は「協力要請」「要請」「指示」の3段階に分けて規定。協力要請は一般的な呼び掛けと変わらず現在、多くの自治体が行っている。これに応じてもらえない場合は、もう1段階上の要請に進む。今回、大阪府は国のガイドラインに沿って、現地確認や通知をした上で要請。営業を継続した店を公表した。

 それでもなお正当な理由なく要請に応じないときは最も強い指示をすることになり、法的に従う義務が生じる。やはり店名公表の措置が取られるが、罰則規定はない。

 問題は、特措法には補償に関する規定がないことだ。大阪府の吉村洋文知事は店名を公表した記者会見で「特措法は責任逃れの法律。補償の2文字がないのは欠陥だ」と批判した。本来、休業要請と補償はセットであるべきだが、そうはなっていない。しかもパチンコ店は当初、中小企業向け資金繰り支援の対象からも外されていた。

 政府の緊急経済対策に盛り込まれた民間金融機関による無利子・無担保融資を受けるには支援対象になるのが要件とされるが、ギャンブル性を理由に対象外とされた。今回、休業要請を巡るごたごたもあって対象には加えられたものの、これで全てが解決するわけではない。支援にスピード感がなければ、営業継続を選ぶ店もあるだろう。

 客の側にも、考えてほしいことがある。営業を続けるパチンコ店前では、朝から常連客に他府県からの客も加わって長い列をつくり、周辺住民からは「よそからウイルスを持ち込まれる」と不安の声も上がっている。

 客は「うつっても、自己責任」と言うが、店でクラスター(感染者集団)が発生したり、店以外の場所で自分が誰かにうつしたりする恐れもある。感染終息が見通せない中、一人一人が責任ある行動を意識すべきだ。(共同通信・堤秀司)

このエントリーをはてなブックマークに追加