注意書きを壁に貼り、来院者に対策を伝える大隈良成院長=江北町の大隈レディースクリニック

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県内の産婦人科が里帰り出産の対応を模索している。全国的には受け入れを中止するケースもあるが、自宅で2週間待機した後に受け入れたり、家族らの面会を制限したりして、出産の現場の感染予防に神経を使っている。

 杵島郡江北町の大隈レディースクリニック(大隈良成院長)は月40人前後の新生児を取り上げ、うち約4分の1は里帰り出産が占める。4月始めからは帰省後2週間の自宅待機で問題がなければ受け入れている。

 人の移動や接触を減らそうと3月下旬、入院中の面会や立ち会い出産は、県内に住む配偶者と両親に限定した。大隈院長は「生まれたわが子や孫を一目見たいと願う心情に、今は応えられない」と心苦しさを吐露する。

 自宅待機や面会の条件を伝えると、以前は不満もあったが、現在は「受け入れてもらえないかと思った」という安堵の声に変わった。県外にいる配偶者が、テレビ電話で立ち会い出産をするケースもあり、「画面の向こうから『頑張れ!』と声が聞こえた」と笑顔を見せる。

 佐賀市の別の産婦人科では診療の付き添いや立ち会い、面会を全て受け入れないことにした。自宅待機の間も同居の家族が県外で働く場合もあれば、佐賀の産院で出産を希望する県外在住の妊婦もいて、県外との接触を完全に断つのは現実的に難しいという。

 政府は16日に緊急事態宣言の対象を全国に拡大。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は21日、里帰り出産を予約した人も状況次第で、居住地での出産を検討するよう呼び掛けた。全国では感染防止のため、里帰り出産の受け入れを中止する産婦人科も相次いでいる。

 内診や処置を含む産科の検診をオンラインで行うことは難しい。大隈院長は「院内で一人でも感染者が出れば休診になり“お産難民”を出してしまう。今は祈るしかない」と話す。

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