外出自粛によって「巣ごもり」と呼ばれる不自由な生活を送る国民の関心は、新型コロナウイルス感染拡大を巡る動きに集中、新型コロナと関係のない事象などないと思われるほどだ。

 コロナ禍を一刻も早く終息させるにはやむを得ないことである。しかし、そんな中でも、感染抑止のために都道府県知事に私権制限を含む強制力を持たせる緊急事態宣言を出した安倍内閣と国民の関係を考える上で、忘れてはいけないことがある。

 それは安倍晋三首相による公的行事の私物化の疑いが指摘される「桜を見る会」問題であり、昭恵夫人が名誉校長を務めた学校法人への国有地格安売却に端を発した森友学園問題、そして首相の側近だった河井克行前法相と妻の案里参院議員の関わりが焦点となっている運動員買収の公選法違反事件である。

 今以上に新型コロナ感染が広がるのを止め、医療崩壊を防ぎ、かつ経済停滞や社会混乱を伴う恐慌を生じさせないためには国民一人一人の協力が不可欠であることは論をまたない。

 そのためには対策の指揮をとる首相に対して強い信任がなければならない。緊急事態宣言の延長やさらなる私権制限も必要となる可能性が指摘されている。首相はできるだけ早く、桜を見る会をはじめとする自身や夫人、側近が関わった問題について詳細に説明し、過ちは率直に認めて国民の理解を得るべきだ。

 約1年前の4月13日に東京・新宿御苑で開かれた首相主催の桜を見る会や森友学園を巡る問題でも、公文書の廃棄や改ざんなど民主主義を揺るがしかねない犯罪的行為が連鎖的に起きた。

 いずれも首相に迷惑がかからないようにという官僚らの忖度(そんたく)が疑われている。改ざんを巡っては作業を強いられた近畿財務局の男性職員が発覚後の2年前の3月、自ら命を絶つというあってはならない事態となった。

 にもかかわらず、首相や麻生太郎副総理兼財務相らは真相を明らかにしようとしなかった。改ざんについては財務省が報告書をまとめたが、今年3月、自殺した職員の手記や遺書が明らかになっても再調査はしなかった。桜を見る会問題では、そもそも多数参加した首相の後援会関係者が、招待される資格があったのかどうかさえはっきりしていない。

 案里氏の公選法違反事件でも、秘書が逮捕、起訴されても夫妻は説明を避け続けている。自民党総裁として夫妻を衆参両院選に際して、それぞれ公認、さらに河井氏を法相という重要閣僚に任命した首相は説明を促しもしない。

 安倍内閣は現在、全国に緊急事態宣言を拡大して自宅内での生活を求め、不要不急の外出や遠出、近隣自治体への移動、大型連休中の帰省、旅行も自粛するよう要請しているが、期限の5月6日までにコロナ禍が終息する見通しは立っていない。専門家の間からは1、2年かかるという見方さえ出てきている。

 国民は既に強いストレスを与えられ、経済的な困窮さえも強いられている。想定以上に長引き、当面の生活のめどが立たないような状況の人々に忍耐や努力を求めるのに、首相が公的行事の私物化などの疑惑を抱えていていいはずがない。自らぬぐい去っておくことが必要だ。(共同通信・柿崎明二)

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