ストレスによって不安やイライラが慢性化すると、自律神経系の交感神経機能が持続的に亢進(こうしん)し、免疫力の低下につながると提唱したのは、故・安保徹博士でした。当時、がん患者さんが増加傾向にあり、このストレスとがんとの因果関係に関する仮説はある程度、受け入れられました。慢性のストレスは、血しょう中の「コルチゾール」(死のホルモンとも呼ばれる)の分泌を促し、副腎が疲労してしまいます。また、ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)活性が低下し、がん細胞などを殺傷する能力が弱まり、がん細胞が増殖しやすくなります。さらに、セロトニンなどの元気ホルモンの分泌を抑制し、うつ状態にも陥りやすくなります。

 この現象は新型コロナウイルス肺炎にも共通するのではないかと危惧しています。新型コロナウイルス肺炎で亡くなった方々の免疫力はどうだったのか? 幼児やご老人の方々が亡くなっている現実を鑑みると、「免疫力の低下」を考えざるを得ません。社会では、感染を拡大させない予防に努力が注がれていますが、個人の免疫力を低下させないことも、もっと大切だと思います。そのためには、暴飲暴食を避け(バランスのとれた食事)、十分な睡眠と適度な運動、生活リズムを乱さず、太陽光をしっかり浴び、身体を冷やさない―などが不可欠です。

 英国のボリス・ジョンソン首相が、流行が終息するまでに人口の60%が感染し27万人が死亡するとした予測を発表し、「感染が広がるにつれ、実に多くの家族が身内・親友を失う」という演説を行いました。私たち日本人も長期戦になる可能性を考慮し、個々人の免疫力が低下しないように、日々の単純な生活を大切にしたいものです。(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授・副センター長・統括産業医 佐藤武)

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