防衛省は沖縄県名護市辺野古で進める米軍基地移設計画で、海底の軟弱地盤改良工事のための設計変更を県に申請した。砂のくいを海底に打ち込む工法などを追加する。

 ただ、沖縄県の玉城デニー知事は申請を認めない方針で、国と県との対立は新たな法廷闘争に発展する可能性が大きい。

 そもそも基地の移設計画の発端は、宜野湾市の市街地にある米軍普天間飛行場の危険性を取り除く目的で、日米両政府が1996年に普天間飛行場の返還と機能の移転で合意したことだ。

 河野太郎防衛相は設計変更にあたって「移設工事を着実に進めることが、普天間飛行場の一日も早い返還の実現につながる」と強調した。

 しかし、防衛省の試算でも県の承認が得られてから基地の完成までに約12年かかる。普天間飛行場の返還は「2022年度またはその後」とされていたが、辺野古移設を前提とすれば30年代以降にずれ込むことになる。「一日も早い」という言葉との矛盾は明らかだ。

 沖縄県が県民投票などで示してきた民意を顧みず、なぜ政府は工事を強行し続けるのか。辺野古移設では、もはや普天間飛行場の危険性という問題の早期解決は不可能だ。代替案を探すしかないのは明らかだろう。

 沖縄県が設置した有識者による「万国津梁(しんりょう)会議」は先に県に提出した報告書で、辺野古移設に代わる方策を検討するため、日米両政府と県の三者による専門家会合の設置を提言した。玉城知事も対話による解決を求めている。政府は県と真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 辺野古沿岸部では、政府が委託した業者の調査で16年に軟弱な地盤の存在が報告された。これを受けて県は埋め立て承認を撤回。その手続きを巡る訴訟の一つは、今年3月に最高裁で県側の敗訴が確定したが、別の訴訟が続いている。国と地方自治体が法廷で争う構図は異常と言うべきだ。

 最高裁の判決も、行政手続きの合法性について判断しただけで、埋め立ての是非を判断したわけではない。

 設計を変更しても、工事の完成は疑問視されている。防衛省の検討でも滑走路は将来、地盤沈下が予測される。地質や地盤専門の学者らは、国が造成を計画している護岸が崩壊する可能性を指摘している。

 政府は、工事を進める理由の一つに、日米同盟の抑止力の維持を挙げている。だが、万国津梁会議は、最新のアジア太平洋地域の安全保障環境を分析。中国のミサイル能力の向上によって、沖縄に固定化した基地は安全性が脆弱(ぜいじゃく)になっていると指摘。日本本土の自衛隊基地への分散も含めた米軍配備の見直しを促している。安保環境の変化をしっかりと見据えた対応こそが安保政策の基本ではないか。

 地盤改良工事のために、辺野古移設計画の総工費は、当初計画額の約2・7倍の約9300億円に膨れあがる見通しだ。県の不承認によって工事が遅れれば、さらに増えることになろう。

 辺野古の工事は関係者に新型コロナウイルスの感染者が出たため、17日に中断した。新型コロナは国の予算配分の優先順位を見直す機会だろう。完成の時期も見通せず、安保政策上の必要性も疑問視される工事に、いつまで巨額の予算を投入し続けるのか。政府の責任は重い。(共同通信・川上高志)

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