米国の児童文学の名作の一つ『あしながおじさん』は、孤児院で育った少女の文章力に目を留めた一人の資産家が大学進学のための奨学金を贈り、そのお礼として、少女が大学生活の様子を毎月手紙につづる物語だ◆少女が名前も顔も知らない支援者を「あしながおじさん」と呼んだことから、日本では交通事故遺児の救済活動が、現在の「あしなが育英会」につながり、どこかの誰かが、そっと支援金を贈る「あしながさん寄付制度」が始まった。奨学金を受けた学生は恩返しにと「あしなが学生募金活動」を開始。支援を募るとともに、感謝の言葉を街頭で伝える◆その募金活動がコロナで中止になった。今年で50年、100回の節目だったことに加え、活動中止で約40億円の資金が不足する見込みといい、関係者の苦悩は大きい。コロナ禍は、ひとり親家庭をさらなる苦境に追い込む。育英会のアンケートに対し、生活費の支払いや進学への切実な苦悩が寄せられた◆本来なら、きのう、きょうあたりに実施されていたはずの学生募金。中止は残念だが、あしながさんが支援をやめたわけではない。前を向いて頑張ろう◆『あしながおじさん』では、支援者の正体を知った少女が最後の一通をラブレターにする。コロナ禍を乗り越えた先に、そんなハッピーエンドが待っていると信じて。(義)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。

このエントリーをはてなブックマークに追加