「手話には手と表情、体の3セットが必要」と伝える県聴覚障害者協会の中村稔理事長=佐賀市の同協会

 テレビで連日のように報じられる新型コロナウイルス関連の記者会見。話し手の傍らに立つ手話通訳者は、マスクを着けていない。顔の表情は、手話でのコミュニケーションに欠かせない重要な要素。口の動きで、手指だけでは表現できない情報を補っている。

 「公平ではない」。県聴覚障害者協会理事長の中村稔さん(61)は、記者会見会場にいるほとんどがマスク姿なのに対し、通訳者の感染防止対策が取られているのか、気をもむ。

 街を見渡せばマスクを着けた人ばかり。「マスクがないほうが、いいと思うことはある」。感染を防ぐために仕方がないと分かってはいるが、口元が読めず、表情も見えない不安は大きく、もどかしい日々が続いている。

 中村さんは、聴覚障害者に感染者が出た場合に、きちんと情報が保障されるのか危惧している。そばで通訳をしてもらえない可能性も想定される。海外で全身、防護服を着て手話通訳をしている姿を見たが、細かい手の動きは分かりづらく「日本ではあり得ないだろう」。

 新型コロナに関する情報が飛び交う中、協会では毎月1回発行している会員向けの新聞で感染予防に関するメッセージを発信している。体調に不安があれば、すぐに相談窓口に問い合わせができるように、番号が書かれた専用のファクス用紙も添えている。

 聴覚障害者と手話通訳者が、どちらも安心できる対策を望んでいる。

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