客がぱったり来なくなった農家民宿「山ぼうし」の田中恒範さん。「今は我慢の時」と話す=伊万里市波多津町

 今ごろは、修学旅行の生徒を迎える準備で忙しいはずだった。伊万里市波多津町で農家民宿を営む田中恒範さん(71)は、静まりかえったダイニングルームを見ながらつぶやいた。「じっと我慢の時ですね」

 伊万里市には33軒の農家民宿があり、関東や関西の修学旅行生を数多く受け入れている。この春は計18校188人分の予約が入っていたが、新型コロナウイルスの影響でほぼ全て、延期かキャンセルになった。

 農家民宿は農業者などが副業で営むケースが多く、ダメージは他の宿泊業ほど大きくはない。それでも、生業(なりわい)にしている経営者もいて、木須町の石黒みさとさん(31)はその一人だ。

 これまで若者や外国人などの個人旅行客が多く、月に20~30組を受け入れていた。有田陶器市の期間中が一番の繁忙期だが、今年は全てキャンセルになった。

 3月下旬、関東の在住者から3週間ほど滞在したいと申し込みがあったが、悩んだ末に断った。「周囲は高齢者が多い。もしものことがあったらという不安の方が大きかった」。当面の間、休業することにした。

 現在は週3回、焼き物の製作補助のアルバイトをしている。ほかの日は宿の掃除や模様替えをしたり、SNS(会員制交流サイト)で動画を配信したりと、何かと忙しい。「いつ再開できるか分からないけど、今できることをきちんとやっておきたい。次にお客さんを迎える時は、もっといいサービスを提供できるように」

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