新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う企業や店舗への休業要請を巡り、感染抑止を優先し対象範囲を広くしたい東京都と経済への影響を懸念する国の調整が難航した。都以外の宣言対象6府県の多くは、国が事業者に補償すべきだとして休業要請に踏み切っていない。国は危機感を強め、混乱収拾を急ぐべきだ。

 感染終息へ国民が一丸となるべき時に浮上した問題の焦点は(1)外出自粛要請で様子を見るか、すぐ広く休業要請するか(2)どこが休業補償をすべきか(3)国と都道府県の役割と責任があいまいな特別措置法の立て付けの悪さ―の三つに集約できる。

 東京都は当初、宣言と同時に休業要請をする構えで対象施設の案を作成。これに対し国は、基本的対処方針で「国民の安定的な生活確保に不可欠」と事業継続を求めていた百貨店、ホームセンター、理髪店などが含まれているとして「厳しすぎる」と除外を求めた。同じく対象にあった居酒屋も、食堂との線引きが難しいとして「営業時間短縮」にとどめさせた。

 一方で国は7都府県知事に休業要請を2週間程度見送ることも打診。「外出自粛要請の効果を見極めた上で施設の使用制限要請、指示をする」とした基本的対処方針がその根拠だが、緊急事態を宣言した国が対応を急ぐ自治体にブレーキをかけるのは、ちぐはぐな印象が否めない。感染者が連日100人以上増加して切迫する都に比べ、国は危機感、スピード感が足りないのではないか。

 東京都を除く多くの府県が休業要請を見合わせているのは、実効性を上げるには事業者への補償をセットにする必要があるものの財政力がある都と違い、独自の協力金支給などが困難なためだ。

 しかし国は個別の補償を否定している。補償なしに休業要請すれば自治体が損害賠償請求の訴訟リスクを抱えることにもなる。欧州ではフランス、イタリアなどで国が事業者に支援金を支給している実例もある。全国知事会も一致して要求の声を上げており、国の責任として休業補償することを再検討すべきだろう。

 こうした齟齬(そご)は特措法の不備に起因する。同法は、緊急事態を宣言するのは国だが、それを受け外出自粛や休業を要請、指示するのは都道府県知事と規定。一方で同法に基づく基本的対処方針は、都道府県は国と協議の上で対策を実施するよう求めている。これでは主導権争い、責任の押し付け合いのような事態が今後も頻発しかねない。

 東京都の休業要請発表を受け神奈川県は、同じタイミング、内容で休業要請をすると決めた。前日まで否定的でありながら方向転換したのは、隣接する都から県内の店などへ多くの人が移動してウイルス拡散の危険があるからだ。各自治体が個別事情に沿って対応するのは当然だが、感染拡大防止のためには近隣で足並みをそろえるべきだ。

 その意味でも前例のない難局で強いリーダーシップを発揮すべきは国だ。もとより自治体の財政力により対策の質や量に差がつき、住民の安心、安全に濃淡が生じるようなことはあってはならない。対策の統一性を保つ総合調整を行えるのは国のほかにあるまい。

 愛知県、京都府も宣言の対象地域への追加を求めており「戦線」は拡大しつつある。国民の命を最優先した一貫性のある取り組みを国に求めたい。(共同通信・古口健二)

このエントリーをはてなブックマークに追加