新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の発令によって、外出自粛の要請や、学校や大型施設の使用制限、医療体制の拡充など、知事はさまざまな対策を取ることが可能になる。協力を求められる住民は日々の生活で何ができ、何ができなくなるのか。法令の条文や政府、自治体の行動計画などに沿って、多岐にわたる影響を分析した。

買い出し出勤OK 外出・移動

 対象地域に暮らす住民は食品や医薬品の買い出し、通院など生活に必要な場合を除き、外出自粛を求められる。職場への出勤も問題はないが、在宅勤務を進める企業が増えそうだ。

 イタリアや米国の一部など、海外では外出禁止令を出し、違反者に罰金を科している国もある。

 都市を封鎖する「ロックダウン」と呼ばれる厳しい制限に比べて、日本はあくまで「協力の要請」で罰則はない。

 駅や空港、高速道路は閉鎖されず、JRや私鉄などの公共交通機関は運行を続ける予定だ。ダイヤの変更、減便の可能性はある。

 外出や移動には感染リスクが付きまとい、どこまで控えるかは一人一人の判断に委ねられる。

大型店休業指示可能に 小売り

 生活必需品を販売するスーパーや薬局、コンビニは営業を続け、日々の暮らしに最低限必要なものは買いそろえられる。銀行などの金融サービスやガソリンスタンドも利用できる。

 農林水産省によると、コメや小麦粉、乳製品、冷凍食品、レトルト食品、即席麺などの在庫は十分あり、供給量は確保されている。農水省は混乱を避けるため「過度な買いだめはせず、落ち着いた購買行動をお願いする」としている。

 一方、延べ床面積千平方メートル超の店舗は、都道府県知事が状況に応じて営業中止などを指示できるようになる。衣料品や雑貨だけを扱う店が対象になり得る。百貨店や大型ショッピングセンターは食品売り場などを除き、閉まる可能性がある。インターネット通販は規制の対象になっていない。

 小規模な店は基本的には営業に制約は設けられない。ただ外出自粛に伴って人出が激減し、自主休業や営業時間を短縮する動きが、さらに進む恐れがある。夜の繁華街は特に打撃が大きい。東京都の小池百合子知事はこれまでカラオケ、バーなど具体的に挙げ、入店を控えるよう呼び掛けている。

休校は続く 学校・保育所

 東京都の行動計画は「感染リスクが高い施設」として、真っ先に学校や保育所を挙げる。小中高校は既に休校している所が多く、子どもたちは家庭で過ごす時間が続きそうだ。

 保育所や学童保育も法令上は使用制限を求める対象になり得る。ただ、感染者の治療に当たる医師や看護師、インフラ事業者ら休めない保護者も多い。東京都は共働き世帯への影響を考慮し、完全に閉鎖することはせず、規模の縮小などで対応する。大阪府は保育所を制限しない方向で検討している。

 大学や専門学校、学習塾も制限の対象に含まれる。私立大学は既に新学期の授業開始を大幅に遅らせている所が多く、しばらくの間、ウェブで講座を実施すると決めた予備校もある。

会場使用制限も 娯楽・イベント

 既に中止や延期が相次ぐ大規模イベントやスポーツ、コンサートなどは、会場の使用制限によってさらに影響が広がる。

 対象となるのは、延べ床面積千平方メートル超の劇場や映画館、集会場、展示場のほか、体育館や水泳場といった運動施設、博物館や美術館、図書館など身近な文化施設も含まれる。政府は施設によっては、より狭い床面積でも制限をかけられるよう基準の見直しを検討している。

 美術鑑賞など、入場制限で人と人の接触を避けることができる場合は柔軟に対応するとしているが、既に休館の措置を取っている施設も多い。

 文化やスポーツにとどまらず、学生らの就職活動にも影を落とす。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、3月末までに44都道府県で開く予定だった合同説明会を中止した。法令上、イベントを開催したとしても罰則はないが、知事が使用制限を要請・指示した施設名は公表される。(共同)


=Q&A= 緊急事態宣言 法に基づき外出自粛要請

 新型コロナウイルス対策として、政府は緊急事態宣言発令の準備をすると表明しました。

 Q 緊急事態宣言って何ですか。

  新型コロナウイルスの全国的なまん延で国民の生活や経済に大きな影響を及ぼす恐れのある場合に、首相が期間と区域を特定して宣言するものです。新型コロナ特措法に基づく措置です。

 Q 宣言されると、どうなるの。

  該当する区域の都道府県知事が、より具体的な期間や区域、施設を定めて、不要不急の外出自粛や使用制限を要請できるようになります。医療施設を臨時に開設するため、所有者の同意を得ずに土地や建物を使用できるようにもなります。

 Q なぜ今、宣言を出そうとしているの。

  国内の感染者が4千人を超え、東京では1日100人前後の新規感染者が発生しています。感染経路が分からない人も多くなり、爆発的な急増を防ぐため、専門家は首都圏などで人と人との接触を8割減らす必要があると考えています。

 Q 欧米で報じられているような首都封鎖の事態になるの。

  政府は、罰則を伴う強制的な都市の封鎖は生じないと明言しています。医療機関への通院や食料品など生活必需品の買い物、社会維持に必要な職場への通勤は制限しません。一方、ライブハウスや接客を伴う飲食店など、感染を広げやすい環境にある業種は休業を求められる可能性があります。政府は、収入が減った世帯や事業主への現金給付などの経済対策を検討しています。

(共同)

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