発電設備を持つ大電力会社から送配電網部門を分社化することを義務づける「発送電分離」が始まった。送配電網の独立性を高めることが狙いで、競争による電気料金の低下や地球温暖化対策として重要な再生可能エネルギーの拡大にも貢献すると期待される。

 だが、送配電網への発電事業者のアクセスが公平なものになるかは、今後の運用次第の部分が多い。中立的な機関や社会が監視の目を向けることが重要だ。

 欧州を中心に20年近く前から電力市場の自由化と競争の促進などを目的に、発電事業者と送配電事業者を別々にする発送電分離が急速に進み、米国の州の一部でも同様の政策がとられた。

 これに対し日本では大電力会社が発電設備とともに送配電網も所有することで、地域市場を独占する形が続き、自社の発電設備を優先して送配電網につなぐビジネスが当たり前になっていた。

 不公平な扱いを受ける新興の発電事業者からは「高速道路を運送会社が所有し、他社の参入を阻むようなものだ」との批判が聞かれたほどだ。

 東京電力福島第1原発事故後、急拡大した再生可能エネルギー事業者からも「送配電網へのアクセスを陰に陽に阻む事態が続いている」との声が根強い。

 日本でも原発事故後に進んだ電力システム改革の中で、電力小売りの完全自由化とともに発送電分離の義務づけが遅ればせながら決まった。発電会社間の公平な競争を進めるためには、送配電網を中立的なものにすることが必要だからだ。

 だが、日本の発送電分離は不徹底だ。新制度は「法的分離」と呼ばれる仕組みで、大電力各社は送配電部門を別会社として切り離し、役員や会計、従業員などを明確に区分する一方、子会社化したり、持ち株会社の傘下に置いたりすることを認めている。英国や北欧諸国のように、別会社化し、発電会社との資本関係も解消する「所有権分離」という仕組みに比べ独立性が低く、各社の運用に任される部分が大きい。

 新規参入の業者からは「グループ会社の一つなのだから、今まで同様、不公平な扱いをされる懸念が残る」との声が聞かれる。

 資本関係を持つ発電事業者などが送配電事業者に対して影響力を拡大し、グループ内の発電事業者を優遇する恐れは否定できない。情報管理の徹底や兼務の禁止などが大前提だ。

 一方で発送電分離は、これまでの不透明な送配電網運用ルールの見直しや情報公開を通じて、発電事業者間の公平な競争を促す可能性も持つ。

 送配電会社間の競争や合従連衡も進めば、太陽光や風力発電など変動する再生可能エネルギーを受け入れるための調整能力も増し、価格の低下が著しい再生可能エネルギーの一層の拡大が進むきっかけにもなり得る。

 導入が諸外国に比べて遅れた分、海外で得られた教訓を参考に、効率的で強靱(きょうじん)、かつしなやかな送配電網づくりにも貢献できる。新生の送配電会社には、制度改革の本旨を忘れず、透明かつ公平な送配電網の運用を進める姿勢が求められる。

 電力・ガス取引監視等委員会などの規制機関が厳格に行動をチェックする必要があるし、新興の発電事業者を含めた社会全体で今後の行動を監視してゆくことも大切だ。(共同通信・井田徹治)

このエントリーをはてなブックマークに追加