新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議は、爆発的感染の前に医療崩壊が起きる可能性があるとして、東京、大阪など5都府県に「今日明日にでも抜本的対策を」と提言した。政府は医療提供体制の早急な拡充に向け、自治体への指導力を発揮すべきだ。

 専門家会議は3月19日の見解では「オーバーシュート(爆発的患者急増)が起きると医療提供体制が崩壊状態に陥り、救える生命を救済できなくなる」として、まず爆発的感染を食い止める必要性を強調していた。

 これに対し4月1日の提言は、感染者数が2日半で倍増した東京都など都市部で急増しているが諸外国のようなオーバーシュートはまだないとの認識を表明。その上で「爆発的感染が起こる前に医療供給体制の限度を超え機能不全に陥ることが予想される」と指摘した。

 第一の優先課題は医療体制整備になったと、従来の考え方を転換した形だ。だが都市部の医療現場からすれば、既に逼迫(ひっぱく)している現状を後追いした提言であり、もっと早く対応すべきだった。

 感染者が2日、700人近くに達した東京都は感染症患者の入院する病床が従来118床だった。受け入れ先を一般病床に広げ3月末に500床程度確保したが、既に患者数が上回る。4千床を目標に確保を進めるものの追いつかず、今は入院させている軽症者を自宅療養に切り替える方向だ。

 日本医師会(日医)は専門家会議の提言に先立ち「医療危機的状況宣言」を発表。横倉義武会長は政府に緊急事態宣言を出すよう求めた。「感染爆発が起こってからでは遅く、今のうちに対策を」と訴える現場の切実な声が専門家会議の背中を押したと言っていい。

 提言は医療体制に関して東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫5都府県が特に切迫していると指摘した。感染症指定医のみならず地域の医療機関が一丸となって患者を受け入れ、医師や看護師の応援派遣など「総力戦」で対応するよう要請。併せて軽症者には自宅療養のほか、高齢家族らに配慮し施設に宿泊する選択肢も用意すべきだと提言した。

 病院は新型コロナ以外の疾患にも対応しなければならず、限られた病床は重症者を優先せざるを得ない局面ととらえたい。

 ただ、これらは自治体任せでは進まない。提言も病床確保、人工呼吸器など医療機器導入の支援、重症者増加に備えた医療人材確保を政府に求めている。クラスター(感染者集団)対策の専門家も不足している。政府と自治体は「今まで以上に強い対応を求めたい」とした提言を受け、一層連携を強化してほしい。

 一方、日医が必要性を訴えた緊急事態宣言は、都道府県知事が医薬品などの強制的収用や、医療施設を臨時に開設する土地、建物を所有者の同意なく使用できるようにするが、逼迫する医療体制を立て直す即効性には限界がある。当面確保可能な医療資源を最大限に活用する―が今回の提言の本旨と受け止めたい。

 ドイツは感染者約7万人中の死亡率が1%程度と各国に比べ低いことで注目される。国内で1週間に約50万件のウイルス検査をし感染者を早期特定したことなどが効果を上げたとされる。日本は1日9千件超の検査能力を確保したというが、なお2千件程度のペースにとどまる。まだ打てる手はあるはずだ。(共同通信・古口健二)

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