作家佐藤愛子さんの過去のエッセーから選んだ近著「気がつけば、終着駅」に、佐藤さんと脚本家橋田壽賀子さんの対談が収められている。ともに90歳を超え、人生の半分以上を「書く」ことに費やしてきた◆「結局、ふたりとも表現することが向いているのね。だからどれだけ苦しくても、やりたいわけですよ…」。戦争の中を生きて、物のない時代を生きて、売れない時を生きて。自分を追い込み、追いつめられた中で生まれた2人の作品に共通するのは、必死に書き続けたことによって培った「伝える力」だろう◆収まる気配が見えないコロナ禍。多くの首長が市民にメッセージを放つが、全員に行き届くのは難しい。伝える力には、互いの信頼関係に加え、伝える側の人間力が問われている気がする◆さて、2人の対談は死後の世界や人生論に話が広がり「好きなことをして一生を終えるのが、人間にとって一番の幸福じゃないかしら。たとえどんなに苦しい思いをしたとしても」という言葉で締められる◆希望の春。新年に立てた目標を振り返り、気持ちを新たにする好機でもある。先行きは不透明でも、自分にできることを一つずつ。「書く」という「好きなこと」ができる喜びをかみしめ、「伝える力」を少しでも高めていけたら…。この欄を担当する一人となった筆者の目標である。(義)

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