新型コロナウイルスの影響で、フィリピンへの帰国が遅れているセサ・モレチョさん(右)と妻のエドナさん(中央)。現在は佐賀県内で暮らす娘の國部シンディさん(左)の元に身を寄せている(シンディさん提供)

 新型コロナウイルスの影響で、佐賀県内を訪れた外国人の中にも足止めを余儀なくされている人がいる。娘の卒業式に合わせて来県したフィリピンのセサ・モレチョさん(70)と妻のエドナさん(61)。セサさんは持病があるが、夫婦ともに医療保険への加入がかなわないまま、不安な日々を過ごしている。

 夫妻は娘の國部シンディさん(34)=神埼市=の佐賀大医学部看護学科の卒業式に出席するため、2月20日に来日した。3月29日に帰国する予定だったが、予約していた航空会社の運航が4月14日まで全て中止になった。

 セサさんは心臓病や高血圧の持病があり、服薬が欠かせない。しかし、旅行保険は30日間の期限を超過して失効。県内の医療機関を受診し、薬を処方してもらうにも、検査などの費用がかさむため、受診に二の足を踏んだ。加入できる保険がないか、母国や日本の保険会社に問い合わせたが、既に日本に滞在していることや、セサさんが高齢であることがハードルになり、断念せざるを得なかった。

 そんな時に頼ったのは、さが多文化共生センター(佐賀市)だった。「父の薬をフィリピンにいる妹から送ってもらおうと思い、問題がないか問い合わせた。いろいろ調べてくれて助かった」とシンディさん。26日にセサさんの薬が届き、胸をなで下ろしたという。

 観光ビザの期限は5月20日までで、帰国する便を4月15日に予約しているが、状況次第で運休期間が延長される恐れがある。

 世界保健機関(WHO)の29日現在の集計では、フィリピン国内の感染者数は1075人で、68人が亡くなった。そのため夫妻の胸中は複雑だ。セサさんは「マニラは感染者が増え、外出禁止になっている。いま帰国するのは、武器を持たずに戦争に行くようなもの」。エドナさんは「マニラにいる家族が心配。自分の国の方が落ち着いて生活できる」と意見が分かれる。

 県健康増進課によると、指定感染症の新型コロナウイルスは、外国籍でも検査から治療まで公費で負担されるが、別の風邪にかかったり、けがをしたりした場合はそうはいかず、シンディさんは気がかりでならない。「治療費はどうすればいいのか。感染拡大は世界規模の問題で、日本国内を訪れている外国人にも特例的な措置を考えてほしい」と話す。

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