新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で史上初の延期となった東京五輪・パラリンピックは、それぞれ来年7月23日、8月24日に開幕することが決まった。延期決定からわずか1週間足らずの早期決着は、アスリートや競技団体が新たな目標に向けて調整に入る上で朗報だろう。大会組織委員会などは、十分な時間が与えられたことを踏まえ、入念な準備へ仕切り直ししてほしい。

 ほぼ丸1年後に設定したのは、ウイルスとの闘いが「長期戦」(安倍晋三首相)となり、終息が見通せないだけに、できるだけ月日を確保したかったからだ。曜日カレンダーを踏襲すれば、当初の競技日程をそのまま移動させることができ、暑さ対策などを含め、ここまでの準備も生かせるとの判断もあった。だが、「安心・安全な五輪」の開催にこぎ着けるには、乗り越えなければならない課題が山積みされているのも事実だ。

 まず、1年延期しても、新型コロナウイルスのリスクがなくなっている保証はない。大前提となるのは、感染の不安払拭(ふっしょく)である。世界から選手が参加する以上、開催国の日本国内が収まっているだけでは不十分だ。五つの輪が示す五大陸すべてで沈静化していなければ、スポーツの祭典の意義は薄れてしまう。

 そのためには、医療態勢が整っていなかったり、医療機器が不足したりする国を、世界が支援していくこと。さらにウイルスや感染者に関する知見を各国が共有、英知を結集し、治療薬やワクチンを開発する作業が欠かせない。

 ウイルスという見えない共通の敵への対処は、自国第一主義ではなく、国際的な協調が何よりも必要であることを教えている。これは、五輪憲章に規定する「友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる」というオリンピック精神にも通じる。

 競技、練習会場などの確保も急務だ。既に別のイベントの予約が入っているかもしれないが、できれば当初計画と同じ施設を使うのが望ましい。組織委が調整・交渉力を発揮する場面だ。

 コロナウイルスの終息が条件になるとはいえ、五輪期間中の感染症対策に万全を期すために、医療態勢の整備も点検しなければならないだろう。約8万人のボランティアや約1万4千人と見込む民間警備員などの再招集も課題となる。

 延期に伴う追加経費は3千億円とも言われる。膨らんだ五輪運営費に加え、どこがどれだけ負担するのか。組織委、東京都、国、国際オリンピック委員会(IOC)は、情報公開を徹底し、透明性の高い意思決定を行うことが必須だ。

 そして、最近の長期にわたる競技の中断により、特に欧米では自宅にこもらざるを得ず、練習もままならぬ状況の選手は、大きな試練に直面する。モチベーションを維持しながら、コンディションを取り戻すのは容易ではない。それを乗り越え、最高の舞台で躍動する姿を見せることが、感動を呼ぶのではないか。

 コロナ禍による延期であっても、東日本大震災からの「復興」を発信する今回の五輪のコンセプトが色あせてはならない。復興の歩みも1年確実に進んだ光景を、影の部分とともに明確に示す。その上で、ウイルスを克服したという協調の証しをうたう祝祭にしたい。(共同通信・橋詰邦弘)

このエントリーをはてなブックマークに追加