2019年5月から1階の商業スペースの入居者がゼロのままになっている唐津市水産会館=唐津市海岸通

 唐津市海岸通の市水産会館が昨年5月から、入居する業者がゼロの状態が続いている。市は公募の準備をしているものの、応募条件の取りまとめが難航し、実施できていない。市が原発関連の交付金を使って整備したが、水産業の発信拠点としての役目を担えないでいる。

 3月中旬、赤レンガをイメージした赤茶色の水産会館に人けはなかった。正面の入り口には「使用の予約が入っていない時は施錠しています」という張り紙。飲食店や鮮魚店のためのスペースには、机や商品棚が無造作に置かれていた。

 施設は2013年、市が整備した。1階は水産物直売所と飲食店用のスペースがある。年間使用料は14年は120万円で、16年から200万円になったが、75%の減免措置を設けた。2階には会議室がある。

 完成と同時に入居した民間業者は1階を丸ごと借り、鮮魚店と食堂を開いた。しかし、経営不振で8カ月で撤退した。直売所スペースでは14年から、佐賀玄海漁業協同組合や唐津魚市場など4団体が共同で鮮魚店を運営したが、19年5月に閉店。飲食店スペースは17年に食堂がオープンしたものの、その年の10月に畳んだ。どちらも現在、空き店舗のままになっている。

 民間がより参加しやすいように、市が19年7月から市内の水産業者に聞き取り調査をしたところ「朝早い仕入れに備えるため営業時間を短くした方がいい」「店の看板を置いてほしい」などの意見が出た。

 ただ、市側は開館時間について「条例で決まっており、鮮魚店の営業時間だけずらすのは難しい」との立場。看板は「赤レンガ調の外観を隠すような派手な装飾は控える」という地元の方針を受け、設置しないでいる。20年度の早い時期での公募を目指しているが、市水産課の担当者は「市内業者との条件の擦り合わせが難しい」とこぼす。

 施設自体への批判もある。大通りから外れた場所に立地し、市中心部から車で約8分かかる。ある水産関係者は「『誰がやっても無理』という空気がある。もっと大通りに面した場所にあれば違った結果になったろうが…」と指摘する。

 市は直売所や飲食店以外の使い方もできるように施設の改修を検討しているが、ハードルは高い。

 施設の整備費約3億400万円のうち、市は8割以上の約2億4800万円を九州電力玄海原発の核燃料サイクル交付金で賄った。水産業の振興を条件に補助金を利用したため、別の目的の施設に改修したり、水産業と関係ない業者を入居させたりはできない。

 市農林水産部の吉村和久部長は「交付金で整備したにもかかわらず、あるべき姿になっていない」とした上で、事業者の撤退が続いている点を念頭に「同じ状況を繰り返さない方策を考えたい」と話す。

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