〈年齢を重ねれば重ねるほど、人から言っていただく褒め言葉に毒を感じるのは、私がひねくれているからなんだろうか〉。女優の常盤貴子さんがエッセーに書いていた。〈あいさつがわりの「おきれいですね」は、全く褒められている気がしないなぁ〉と◆年を取ることへの微妙な心理。江戸狂歌にも同じような気持ちを表現した一首がある。〈いつ見ても さてお若いと口々に 誉めそやさるゝ 年ぞくやしき〉。いまの時代は「お若い」と持ち上げられて、そうだ頑張れ、頑張れという声が大きくなっている気がする◆ぼちぼちと自分流にと思う身には戸惑うばかりだが、年を取って気がかりなのは認知症だろうか。物忘れが多くなり、同じ話ばかり。食事の内容を忘れたはいいが、食べたかどうか忘れると危険信号らしい◆団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症の人が約700万人となる(厚生労働省の研究班の推計)。高齢者の5人に1人である。そして少子化。東京都もあと15年もすると人口減に転じるという◆この春、定年や退職を迎える人もいよう。そろそろ高齢者の仲間入りだ。年金や墓じまいを思案しながらの先行きだが、「人生100年」「生涯現役」と出番はますます増えそうだ。「お若い」は褒め言葉というより、現実的な社会の要求なのかもしれない。(丸)

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