太陽光の下で、湯飲みに注ぎ出来具合を確かめる小野原栄信さん=嬉野市の小野原製茶問屋

太陽光の下でお茶を入れ、出来具合を確かめる小野原栄信さん=嬉野市の小野原製茶問屋

太陽光の下で、湯飲みに注ぎ出来具合を確かめる小野原栄信さん=嬉野市の小野原製茶問屋

手ですくい、火入れの状態を確かめる=嬉野市の小野原製茶問屋

 荒茶の仕上げ工場で、火入れした茶葉の手触りや香りを確かめた。嬉野市にある製茶業「小野原製茶問屋」の小野原栄信さん(58)。昨年、日本茶インストラクター協会などが主催する「日本茶アワード2019」で、「プラチナ賞」を受賞した。伝統の味を守りながら、めまぐるしく変化する消費者の好みを追いかける。「嬉野は他の産地と比較すると規模は小さい。だからこそ、品質で競争していくしかない。高品質にこだわっていきたい」。生産者と消費者の「つなぎ役」として、熱がこもる。

 全国の茶産地から463点が集まった日本茶アワード。昨年夏ごろから行われた審査を勝ち抜き、小野原さんが出品した蒸し製玉緑茶と釜いり茶の2品がプラチナ賞に輝いた。「ちゃんと仕上げれば受賞できるとは思っていた」と冗談めかすが、「素材の持ち味を壊さないように火入れすればいいものができる」と語る。

 小野原さんは、中央大商学部を卒業後、神戸の茶の小売店で3年間、製茶の工程を学び、20代のころ帰郷した。小さいころからうれしの茶が身近にある環境で育ってきたため「何より自分自身もお茶が好きで、自信を持って販売していける」と、小野原製茶問屋の跡継ぎとなった。「品質だけはどの産地にも負けない」と情熱を注ぐ。

 「まずは味重視だが、全体としてバランスが取れたものを目指している」。小野原さんは、毎年4月の新茶の時期から茶葉を仕入れ、専用の冷凍庫で保管する。仕入れた茶葉は自社工場で加工し、茶葉が丸い蒸し製玉緑茶や、伝統の釜いり製玉緑茶などに仕立て上げる。火入れの工程では仕入れた茶葉を乾燥させて品質の劣化を防ぎ、香ばしい香りを付ける。茶葉そのものの素材を生かそうと、火入れは通常よりも低く設定しているという。

 その後、複数の茶葉をブレンドする工程を経る。毎年気候が変動する中、荒茶の出来栄えもその年によって変化するため、ブレンドすることで味や香り、色などを調整する。「全てそろったいい茶葉を仕入れることができればいいが、そういった茶葉はなかなか出ない。この茶葉は味、これは香りなど、パズルを組み合わせるように、最終的な形を想像しながら仕入れている」と話す。

 市では2015年度から、日本貿易振興機構(ジェトロ)佐賀貿易情報センターと共同で、うれしの茶の海外への販路開拓を進めている。これに合わせて、県茶商工業組合の理事長も務める小野原さんも、海外への輸出に向け、中心メンバーとして活動。台湾やシンガポールなどへの市場調査や商談会に取り組んでいる。

 ただ、海外への販路拡大の背景には、茶の国内市場が低迷していることへの危機感もある。全国茶生産団体連合会の統計によると、2018年度の緑茶の国内消費量は8万5928トン。前年度より増加しているが、10年前からは2割近く減少している。

 小野原さんは、海外への販路拡大に向けた県内の任意団体の統一ブランド「サガコレクティブ」のメンバーにも名を連ねる。「海外に行けば、その国のお茶の飲み方もある。いろんな飲み方があっていい」と意欲を見せる。

 「素朴なおいしさが茶の原点。製茶業として、常に変わらない、高品質のお茶を保つようにしている」。ライフスタイルの多様化によってお茶を取り巻く環境が変化する中、これからも変わらない伝統の味を提供し続ける。

 

産地の伝統、継承へこだわり

 光が差し込む窓辺に湯飲みを並べ、お茶を注いだ。試飲用のお茶を入れる際は、自然光が入る窓辺で行うという。「蛍光灯よりも、太陽の光の方が茶の水色や茶葉の色などの善しあしがわかりやすい」のだとか。
 茶葉は80度のお湯で1分半蒸らす。ほぼ毎日、火入れをする度に、窓辺で茶を注ぎ試飲を続け、その日のお茶の出来栄えを見極める。朝と夕方で気温が変わるため、その都度火入れの温度を微調整する。「製茶の工程は学んだが、後は試行錯誤を繰り返しながら自分の感覚で身につけてきた。製茶することで、1+1が2以上になるようにできれば」と心がける。
 うれしの茶は約400年の歴史を持つ。「茶の栽培に適した気候や風土を持つ産地であることを証明している」と誇りを持つ。産地の伝統を継承するため、品質にこだわり続ける。

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