牛が好きで、なるべく牛に負担をかけない手術法を模索したという内山健太郎獣医師=唐津市菅牟田の診療所で

 産業動物の獣医師の全国研究発表で、東松浦農業共済組合(佐賀県唐津市)の獣医師・内山健太郎さん(44)が最高の農林水産大臣賞を受けた。長年、肥育牛の診療に携わり、自らの実践を基に、尿路閉塞(へいそく)になった牛に人工尿道を形成する手術方法を紹介した。尿道の機能を温存し、牛に負担をかけない手術方法が、高く評価された。

 大会は獣医師のレベル向上を目指し、毎年1回開かれている家畜診療等技術全国研究集会。内山さんは、九州大会で15人中の上位2人に選ばれ、2月下旬に東京で開かれた全国大会に出場した。各ブロックの代表と、獣医師の中堅講習会で選出された2人の合わせて20人が発表した。

 内山さんのテーマは、尿石が詰まって排尿できなくなった去勢牛への対処方法。牛の陰茎は体内にS字状に折り畳まれているため、内部の尿道に石が詰まりやすく、悪化するとぼうこう破裂などを引き起こす。こうなると屠畜(とちく)しても検査で不合格となり、肉として出荷できなくなる。佐賀牛などは一頭100万円以上するため、農家にとっては痛手だ。

 対処方法は従来、体内の陰茎(尿道)を体外(肛門の下)に引き出し固定するバイパス手術が行われてきた。ただ、陰茎を切断するため大量に出血する。牛の成長に伴い、排尿口が皮の下に埋没し排尿できなくなる場合もある。

 そこで、内山さんは陰茎を切断せず、内部の尿道を切り開いた上、皮膚と縫合し、人工尿道口をつくる方法に15年ほど前から取り組んでいる。この方法だと、新たな尿道口が時間とともに牛の体の一部となり、排尿に全く支障がないという。内山さんは「排尿には、海綿体など尿道周囲のクッション構造が非常に大事」と推察した。

 今回の受賞について、内山さんは「大学院に席を置く研究者による高レベルの発表ばかりで、自分が受賞するとは思わなかった」と言い、論文は機関誌に発表されるため「現場で一人で困っている全国の獣医師の参考になれば」と期待する。近く、独立して診療所を開く予定で、「牛の病気の予防に力を入れたい」と、地域の肥育牛、畜産業の支援に意欲を見せる。

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