手際良くまんじゅうを丸めていく井手野加工グループのメンバーたち=佐賀市三瀬村の井手野加工場

約30年、まんじゅう作りを共にしてきた井手野加工グループのメンバーたち。前列左が代表の内村さん

手際良くまんじゅうを丸めていく井手野加工グループのメンバーたち=佐賀市三瀬村の井手野加工場

お茶を入れて近況を報告し合う試食タイム。「これが楽しみよ」と口をそろえるメンバーたち=佐賀市三瀬村の井手野加工場

 午前5時、暗く静まり返った山あいで、加工場の明かりだけがともっていた。標高約400メートルの佐賀市三瀬村の井手野地区。中では女性たちが、慣れた手つきで材料を混ぜた生地を練り上げ、丸めていく。しばらくすると「名物」のまんじゅうが蒸し上がった。

 70、80代の女性農家5人でつくる「井手野加工グループ」は毎週土曜から月曜までの週3回、15種類以上の加工品を道の駅に出荷している。てきぱきと作業する会員同士はあうんの呼吸で、代表の内村則子さん(82)は「集まって近況を話し合えるのが楽しみ。やめる時はみんなで一緒にやめようと言ってるほど」と話す。

 三瀬村は佐賀・福岡両県の県境にあり、人口150万人を超す福岡市の中心部から車で1時間ほど。身近に自然を満喫できる「高原」として、キャンプや釣りなどを楽しむ都市部の人たちが訪れる。

 グループの結成は1986年。当時は地区の共同栗園の立ち上げや三瀬トンネルの開通などが続き、観光客を呼び込む「特産品を」と農家の女性たちが手を挙げたのがきっかけだった。バスの車庫を手作業で加工場に改修し「農業の合間になんなっと作ろうてね。初めは小遣い稼ぎみたいな感じだったね」と笑う。

 原料のもち米は、通常の半分以下に農薬を減らし、山間部の澄み切った水で育まれたもの。まんじゅうに練り込むヨモギは、田んぼのあぜ道で摘み取る。甘さ控えめのあんこともっちりとした生地の食感は、長年の試行錯誤のたまものだ。地域で受け継がれてきた昔ながらの作り方やプロから習った調合を研究し、「井手野の味」が出来上がった。酒かすを加えて数時間発酵させた生地とあんこは、当番が一日かけて仕込む。

 めんたいこのつけ汁を使った切り餅など、商品開発にも積極的に取り組み、東京や福岡などで店頭販売に駆け回ったこともある。時には孫をおぶったり、加工場で昼寝をさせたりして、子守や家業と両立させてきた。会員たちは「若かったもんねえ」と目を細める。

 週末の道の駅には三瀬トンネルを通って来た客でにぎわい、まんじゅうはほとんど売り切れる。内村さんは「『この味は続いてほしい』『まんじゅう目当てに来たよ』と言われるのが励みになって続けてきた。体力が続く限りやっていきたいね」。  =随時掲載=

このエントリーをはてなブックマークに追加