過度に恐れず確かな情報得て落ち着いた対応を

新型コロナウイルスの感染が国内でも拡大し、いつ終息するか予測がつかない状態に多くの人がストレスを抱えています。「過度に恐れず、情報を見極めて」という感染症学分野の専門家である佐賀大学医学部教授で医学部付属病院感染制御部の青木洋介部長に新型コロナウイルスの現状や、今後新たなウイルスが発生した場合にも共通する予防法を聞きました。

 

感染防止の基本はマスクとアルコール消毒(手洗い)

感染源分かる間は封じ込めが可能

■新型コロナウイルスの現状

 新型ウイルスが外国から国内に入ってきた場合、感染者の行動などをたどって、感染源
が分かる間は、封じ込めが可能です。町の中を歩いただけで感染したなど、どこでだれか
ら感染したか分からない人が増加している場合、既にウイルスが広がっている状況を指
す「市中感染」が起きていると考えられます。

 昨年12月以降、世界的に問題になっている新型コロナウイルスは、中国から感染が始まりました。日本国内でも感染者や死者が出ています。

■新型コロナウイルスの特徴

指先や指の間、手首なども入念に洗う

 新型コロナウイルスに感染者の2~3%が肺炎を発症しています。高齢者や糖尿病などの持病がある方は、肺炎にかかる確率が高くなります。潜伏期間は3~10日と言われています。発病しない人は潜伏期間中に免疫ができて、体内からウイルスを排除します。しかし、潜伏期間中に人に感染させることがあります。

 インフルエンザは感染から発症まで約2日と短く、人に感染させる確率は限られますが、新型コロナウイルスは発症まで最大約10日間と長いので、感染の拡大を招く可能性が高くなります。これが一番怖いですね。

 新型コロナウイルスの感染力は、インフルエンザと同じ程度と言われています。しかし、人類が初めて経験する感染症は、多くの人が抗体を持っていないので、その分、症状が強く出る可能性があると思います。

■すぐには病院に行かない 

 自分も新型コロナウイルスに感染したのではないか、と疑いがある場合、不安は分かりますが、佐賀県内で感染した患者さんの発生はありませんので、過度の不安は必要ありません。日常生活ができる程度であれば、病院に行かないでようすを見てください。病院に行ったために、新型コロナウイルスやほかの病気をもらう可能性もあります。また、いつも以上に発熱や咳に敏感になって病院に行こうとする人が増えると、医療機関が対応できなくなり、適正な医療が届けられなくなってしまいます。もし咳を伴う高熱が出てきたら、まず保健所、もしくはかかりつけ医に電話をして、指示を仰いでください。

 しかし、市中感染が起これば、風邪の症状に過ぎない人も新型コロナウイルス感染者かもしれないという対応の仕方に変わっていくと思います。

 

感染予防に日ごろから咳エチケット

■接触感染と飛沫感染

 ウイルスは人から人へ伝播していくことで、生き延びていきます。接触感染は新型コロナウイルスなら、例えば感染者が握った手すりやドアノブにウイルスが付着した場合は、数時間~2日程度はとどまると考えられています。一般的なウイルスの中には、1週間程度、消えないものもあります。そうとは気づかず、手すりなどを触った手で目や口を触ることで、気づかないうちに感染してしまいますからよく手洗いをしてください。飛沫感染は、感染者がくしゃみや咳などと一緒に放出したウイルスを近くにいる人が吸い込んで感染します。

■マスクも感染源に

 装着したマスクの表面には人の飛物が付着しています。マスクですら感染源になることがありますから、使われたマスクの表面は手で直接触らないようにしてください。

 マスクの量には限りがあります。1人で車に乗っている時や、誰もいないところを歩く時などは感染予防という意味でのマスクは必要ありません。一番怖いのは、本当に必要な時、医療機関で不足することです。市中感染が起きていない段階では、むやみにマスクをする必要はないと思います。

■咳エチケット

 飛沫感染を防ぐためには、人と人の間を2㍍空けることが必要と言われています。しかし、日常生活の中で、その距離を保つことは大変難しいですね。そこで感染を防ぐためには、咳やくしゃみが出る時はマスク、マスクがなければハンカチやひじの内側を使って口や鼻を抑えるようにしましょう。普段から咳エチケットを心がけることで感染を防ぐことが可能になります。

■手指消毒用アルコールが効果的

1)消毒液がもれないように手のひらをくぼませる (上) 2 )ポンプを下まで押して液をたっぷり取る。両手、指先、指の間など手洗いと同じ要領でこすりつける。目安は約30秒(下)

 手のひらをくぼませて、そこに手指消毒用アルコールを、手のひらからこぼれるくらいたっぷりと取ります。手のひらをすり合わせるだけでは不完全です。手の甲、指先、指の間、手首までまんべんなくすり込んで、初めてウイルスが死滅します。目安として30秒間。意外と長い時間ですが、その時間をかけてすり込んでアルコールが乾くくらいの量を用いることが必要です。手のひらに水分があるとアルコールが薄まるので、手は乾いた状態で使用してください。

 石けんを使った手洗いでもいいですが、除菌するには手指消毒用アルコールが何百倍も優れています。石けんは香りや清涼感があり、短い時間でもきちんと手を洗ったつもりになりますから、手指消毒用アルコール同様、十分に時間をかけて洗ってください。

 

大切なのは確かな情報を得ること

■パニック・集団雪崩を起こさない

 ほとんどの人には何も起こっていないのに、マスメディアで例外的なことに光が当たると、どこでも起きているような錯覚を起こしてしまいます。情報を得れば得るほど混乱し、根拠がないことでも誰かが「こうらしいよ」とつぶやくと、雪崩を起こすようにその話が一気に広がる「集団雪崩」現象が起きます。過度に恐れずに、人ごみの中に出かけることがあればマスクをするなど、基本的なことを知って落ち着いた行動を取ることが肝心です。
 

 

佐賀大学医学部国際医療学講座・臨床感染症学分野
青木洋介教授

佐賀大学医学部医学科国際医療学講座主任教授(国際医療・臨床感染症学分野)
佐賀大学附属病院感染制御部長
あおき・ようすけ 1984年、福岡大学医学部卒後、佐賀医科大学(当時)、米国スタンフォード大学などを経て97年、佐賀医科大学へ。2003年、佐賀大学医学部準教授、07年から佐賀大学医学部附属病院感染制御部部長。11年から現職。

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