東京五輪・パラリンピック延期の一報から一夜明け、車いすテニスのトレーニングに臨む大谷桃子(右)と古賀雅博コーチ=神埼市の西九州大

 新型コロナウイルスの感染拡大による東京五輪・パラリンピックの延期決定から一夜明けた25日、佐賀県内の関係者にも動揺が広がった。出場を目指す県関係の選手たちは、残念な思いを抱きつつ「プラスに考える」と来年を見据える。ホストタウンとして事前合宿の準備を進めていた自治体は対応に追われた。

 

■アスリート 「悔しさ」胸に夢舞台へ努力

 4年に一度の夢舞台の延期決定に、出場を目指す佐賀県関係のアスリートは複雑な思いを隠せない。「仕方ない」。夢の実現に向け気持ちを切らさず、努力を続ける決意を新たにした。

 ラグビー7人制男子で2大会連続出場を目指すコカ・コーラレッドスパークスの副島亀里ララボウラティアナラ(36)=佐賀市=は「正直悔しい思いはあるが、一番大事なのはみなさんが健康であることなので仕方ない」と話す。

 12人の代表枠を巡る争いはし烈で、ベテランにとって開催が1年程度遅れることの意味は大きい。「今までと何も変わらない。できることをしっかりやっていくだけ」と前を向いた。

 ラグビー7人制女子の主力を担う堤ほの花(22)=日体大卒、嬉野市出身=も「仕方がない」と冷静に受け止める。「プラスに捉えて1年後を目指したい。スキルアップや体づくりなど準備をしてベストコンディションに持っていきたい」と力を込めた。

 ハンドボール男子の代表入りを目指すトヨタ紡織九州レッドトルネード(神埼市)のGK岩下祐太(28)。1月のアジア選手権では正GKとして日本の3位入賞に貢献した。「びっくりしたけれど、監督も『あと1年あると考えよう』と話し、選手たちもポジティブに捉えている」

 車いすテニスでパラリンピック出場を目指す大谷桃子(24)=西九州大卒=は、25日も大学のコートで普段通りの練習に臨んだ。「どうピークを持っていくか考えてやってきた」と残念がりつつ、「選手はみんなそう思っているはず。とにかく練習に集中するだけ」と自身に言い聞かせるように語った。

 

■キャンプ地など 再準備へ「早く時期決めて」

 フィンランドなど5カ国の事前キャンプに向け準備を進めてきた佐賀県と佐賀、唐津、嬉野の3市。突然の延期で合宿が“白紙”となって対応に追われた一方、「よりよい歓迎を」と決意を新たにする関係者も見られた。

 「早く時期を決めてほしい」。県の担当者はやきもきする。来年の事前合宿に向けて再調整に取りかかるが、開催時期が見通せず「ホテルの予約などができない」と困惑。数日中に調整を進める予定で「推測できる時期をシミュレーションして動くしかない」。

 オランダ選手受け入れを心待ちにしていた嬉野市中央体育館「ユースポ」の管理人・生田定さん(65)は「手持ちぶさたになった」と落胆。それでも「会話できるよう準備する」と英語の勉強を続ける。

 唐津市の3人制バスケプロチーム「カラツレオブラックス」は、金メダル候補のセルビア代表のキャンプ誘致に携わってきた。坂本正裕GM(39)は「ゆっくり準備ができる。よりよい歓迎をしたい」と前向きに捉えた。

 

■知事 「全力で支援する」

 東京五輪・パラリンピックの延期決定を受け、山口祥義知事は25日、県庁で報道陣の取材に応じ、「新型コロナウイルスがこういう状況なので、やむを得ない。成功裏に終わるよう、佐賀県としても全力で支援する」と述べた。

 聖火リレーについては「本来予定されていた皆さん方でやれるよう、環境を整えてほしい」と注文した。

 県内ではオランダ、フィンランド、セルビア、ニュージーランド、タイの5カ国が佐賀市、唐津市、嬉野市の3市で事前キャンプすることが決まっていた。山口知事は、今のところ各国から五輪延期に伴うキャンセルなどの連絡はないとした上で、「時期はずれるかもしれないが、ぜひ良い環境でキャンプできるようにしたい」と話した。

 事前合宿の会場となっているSAGAサンライズパークは、2023年の国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会(SAGA2023)に向けて改修作業中。事前キャンプに関して知事は「施設整備との関係もあり、調整が必要」との見方を示した。

 

■チケット当選者 「延期でも有効?」困惑

 高い競争倍率をくぐり抜けて五輪・パラリンピックの観戦チケットを手にした佐賀県内の当選者からは「チケットは有効なのか」などの声が聞かれた。

 五輪出場が期待される堤ほの花選手の父・明英さん(60)=嬉野市=は、夫婦で娘の晴れ姿を見るため、試合が行われる3日間のチケットを確保。航空券も予約していただけに「残念だが、こればかりはどうにもならない」と話した。

 パラリンピック水泳のチケット2枚が当たり、妻と観戦予定だった会社員の大隈博文さん(36)=鹿島市=は「国旗を持っての応援や海外の人との写真撮影を想像していたのに」と落胆。複数競技に応募してようやく手にしていただけに「延期になってもチケットは有効なのか」と気をもむ。

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