米映画「ショート・サーキット」が日本で公開された昭和61(1986)年、初日の劇場前に暴走族が集結した。映画はロボットが騒動を巻き起こすコメディーなのだが、回路がショートしたという意味の題名をバイクレースの話と勘違いしたらしい。近ごろは原題をカタカナに置き換えただけの題名ばかり、と字幕翻訳家の戸田奈津子さんが嘆いている◆同じ病は新型コロナウイルスでも起きている。パンデミック(世界的流行)にクラスター(感染者集団)、オーバーシュート(爆発的患者急増)やらロックダウン(都市封鎖)やら聞きなれない言葉が続々。テレビの専門家も「エビデンス(科学的根拠)を」と繰り返す◆「日本語で言えることをわざわざカタカナにする必要があるのか」との批判を受け、政府は難解な用語の読み替えを検討するという。封じ込めには専門家の知見が頼みとはいえ、彼らの発言を短絡して使っていなかったか、メディアも自戒しなければ◆オリンピックを「五輪」と書くのは戦前、五大陸を示すシンボルマークと宮本武蔵の『五輪書』から新聞記者が発案した。来年夏に延期される東京五輪は、安倍首相の在任中に開催できるよう知恵を絞ったとの見方もある。やはり大事なのはレガシーなのだろう◆あ、ここは政治的遺産と書くべきか、実績と書くべきか…。(桑)

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