新型コロナウイルス対策で一斉休校が続く小中高校などについて、文部科学省が4月からの再開に向けた指針を公表した。まずは、子どもたちが安心して登校できる環境を整えることが大事だ。

 感染予防への目配りは当然だが、日常生活を取り戻すため、学校や先生には臨機応変の細やかな配慮が求められる。多くの学校で1カ月以上の休校となる。ストレスを抱えた子どもたちの心のケアも必要だ。経験したことのない難しい局面に立ち向かう学校を教育委員会や地域社会、家庭がしっかり支えてほしい。

 指針は、専門家会議の提言を踏まえて「換気の悪い密閉空間」「人が密集」「近距離での会話」の3条件がそろう場面を避けるよう求めた。対策として、教室の換気やマスクの着用、検温などの徹底を挙げ、確認用のチェックリストを付けた。再開後に感染者が出た場合の出席停止や臨時休校の指針も示した。

 萩生田光一文科相は「状況が改善したわけではない。警戒を緩めず準備を進めてほしい」と述べ、再開の理由は「感染拡大防止に関する意識が高まっている」からだという。恐る恐るの再開だ。

 子どもが密集する教室に感染者が出ると一気に感染が拡大する恐れがあり、予防は何より大切だ。登下校時に手をアルコール消毒する、机の間隔を広げるといった方法も有効かもしれない。先生同士の濃厚接触も極力減らすよう労働環境を考慮してほしい。大人から子どもに感染することがあってはならない。

 一方、マスク姿の子どもが並ぶ教室はピリピリした空気になるに違いない。こんな時こそ、何げない日常を取り戻す知恵が欲しい。指針は3条件を避ける工夫を求めつつ、部活動の再開も認めた。こまめに手洗いや消毒をしながら、体育も普段に近い形で行いたい。体を動かさないと子どもたちは参ってしまう。

 心配なのは生活の乱れだ。休校中、保護者からは「子どもが夜遅くまでスマートフォンで動画ばかり見ている」と心配する声が上がっている。

 長い休みは不登校のきっかけになりかねない。考えたくもないが、長期休暇が終わって新学期が始まると、子どもの自殺が増える傾向がある。家庭訪問や保健室での対応など、学校が子どもの変化に気付ける機会を生かしてほしい。家庭でも、きちんと朝ご飯を食べさせて送り出すような、規則正しい生活を取り戻す努力が要りそうだ。

 3学期に勉強できなかった部分の取り戻し方も考えなければならない。指針は「補習や家庭学習」を挙げた。多くの学校は新しい学年の学びの中で教えるしかないが、急がなくていい。焦りは禁物だ。丁寧に補おう。

 指針は、感染者への偏見や差別を生じさせない指導も求めた。校内で感染者らが出た際、いじめにつながってはならない。感染した個人の責任を問うのは誤りだ。

 先生たちは想定外の事態に戸惑い、朝令暮改と見られる行動もあるかもしれないが、保護者らは温かく見守ってほしい。しかも、先生も家庭にさまざまな事情がある。あれこれ求められ、心が折れる事態だけは避けたい。

 この試練も、感染症を学び、人を思いやる教育の機会ととらえよう。子どもたちが落ち着いて学べる環境を整えるために何ができるか。大人たちの力量が試されている。(共同通信・池谷孝司)

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