安倍晋三首相は新型コロナウイルス対策を巡り、政府の専門家会議が示した新見解を受けて、臨時休校している小中高校の新学期からの再開へ向けた方針策定を表明した一方、大規模イベント自粛は「継続」の言葉は避けつつ慎重対応を求めた。

 専門家会議が19日に公表した新見解は、感染源不明の患者数が増えていけば欧州のような爆発的な患者急増「オーバーシュート」が起こる可能性があると指摘。そうなれば医療崩壊が起き、対処不能に陥りかねないとして、今後は感染状況に応じた地域ごとの対応への移行を求めた。国と自治体が一層連携を強め、爆発的患者急増を回避すべき局面を迎えたと言える。

 新見解は国内の現状を「引き続き持ちこたえているが、一部の地域で感染が拡大している」と分析。その上で「感染源が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながる」と警鐘を鳴らした。日本はなおも予断を許さない状況と言わざるを得ない。

 このような認識を示した専門家会議の念頭にあるのは、爆発的患者急増で死者3400人超と中国本土を上回ったイタリアなど欧州の現状だ。「欧州の二の舞いを避ける」が新見解の全体を貫くテーマと言ってもいい。

 ならば、どのような手を打つべきか。専門家会議が前提として注意喚起したのは「爆発的患者急増は事前に兆候を察知できず、気づいたときには制御できない」という実態だ。欧州諸国では、医療崩壊により本来救える生命も救済できないような状況になっており、強制的外出禁止や店舗閉鎖といった強硬措置も取らざるを得なくなった。

 東京五輪・パラリンピックを控えている日本は、このような社会、経済への悪影響が計り知れない事態は何としても避けたい。そのため専門家会議が示した新たな指針が「地域ごとの対応」だ。

 政府はこれまでイベント自粛や小中高校などの一斉休校を、全国一律で要請してきた。これに対し新見解は感染状況別に(1)拡大傾向にある地域(2)終息に向かい始めている地域(3)感染が確認されていない地域―に分け、感染拡大地域は「一律自粛の必要性」を指摘する一方、ほかについては徐々に解除する方向性を示した。社会、経済活動との兼ね合いを取りつつ、対策にメリハリを付けて重点化する狙いだ。

 これに関し専門家会議は、感染拡大を一定程度抑えた北海道の例を挙げつつ「感染拡大傾向にある自治体は、厚生労働省の情報などを基に、自発的な取り組みを実施してほしい」と求めた。地域ごとの対応は自治体の知恵と行動力が試される。

 一部地域にとどまらず広域から人が集まる大規模イベントについても首相が今回、自粛継続は求めず「今後は専門家会議の見解を参考に主催者が判断を行う」としたのは、自粛ムードの長期化による社会、経済の影響を最小限に抑えつつ、都市部を中心に対策を集中化したい考えを反映したものだ。

 ただ、その際には地域住民の理解と協力が必要なことは言うまでもない。大阪府と兵庫県の両知事は19日、大阪―兵庫間の不要不急の往来自粛を要請した。なぜ両府県の往来だけが問題なのか、住民は戸惑ったに違いない。理解と協力には十分な説明が不可欠だ。(共同通信・古口健二)

このエントリーをはてなブックマークに追加