春を告げる炎がバチバチと音を立てて駆け巡った。唐津市七山の樫原湿原で、枯れ草を焼き払い、芽吹きを促す「野焼き」が行われた。貴重な湿地の保全が目的で、木が生い茂るのを防ぐ。
樫原湿原は“九州の尾瀬”とも呼ばれ、珍しい湿原植物の宝庫。野焼きは毎年3月中旬頃、湿原内にある池の水位を下げて準備する。乾燥に必要な好天が数日続いたことを受け、20日に実施された。
地元の桑原地区の住民を中心にボランティアら約25人が参加した。消防車が待機し、事前に草刈りをするなど飛び火対策をした上で点火した。燃やす範囲の境界に水をまいたり、杉の葉を火消しに使ったりと手慣れた様子で、約1時間半掛けて一帯を黒く染めた。
桑原地区の石川勇治組長(58)は「この場所を地元みんなで守っていく。協力して無事に終えることができた」と笑顔を見せた。