大イチョウ直下に建つ伝統的建造物の曳家中の様子

 有田の泉山地区に、国指定天然記念物「有田のイチョウ」がある。樹齢千年、高さ30メートル、根回りが11メートルを超える大木で、樹木医の方々でも、「単幹のイチョウとしては全国最大級。これより大きいものは知らない」と一様に驚かれる。

 この大イチョウを取り巻く景観が、今、大きく変わろうとしている。事の発端は、4年前の2016年5月3日。突如として大枝が落下し、直下のお宅の屋根を貫通したのである。実は、直下のお宅も、国選定の「有田内山伝統的建造物群保存地区」の指定物件で、しかも現存する最古級の建物。イチョウを切る、建物を壊す、どちらを取っても文化財の予算で文化財を壊すという矛盾。この全国的にも例がない状況に調整は難航、昨年ようやく事業が動き出した。

 枝の落下防止に、枝と枝をロープでつなぐケーブリングを実施し、直径10センチ以上の枝が落下しないようにした。しかし、直下に建物があるままでは大型の重機も入らず、イチョウの管理・保全が十分にできないことに変わりはない。そのため、敷地を一部買収させていただき、そこに建つ文化財の建物は曳家(ひきや)で対処することになった。

 その曳家の作業とともに、隠れていたイチョウの太い幹が、徐々にその姿を現すようになった。これまで観光客の目に留まることは少なかったが、今後は焼き物だけではない有田の観光スポットの一つとして、これまで以上に注目されるようになればと思う。(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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