子どもの頃、額に大きなこぶのある政治家をテレビで見ました。すごく不思議でしたが、「脂肪のかたまり」だと聞かされました。その後、医者になり、それとは異なる小さな皮膚のしこりを、「脂肪のかたまり」と表現する患者さんが少なくないことに気づきました。

 どうも患者さんの言う「脂肪のかたまり」とは医学的には二つあるようです。一つは、政治家のこぶと同じ「脂肪腫」、もう一つは「粉瘤(ふんりゅう)」です。

 脂肪腫は脂肪細胞の良性腫瘍です。弾力性のある柔らかいこぶです。昔話の「こぶとりじいさん」はこれだったのかもしれません。押しても痛みはなく、直径10センチくらいになっていても症状はありません。気にされずにまるで勲章のように胸や背中に大事に持っている人も少なくありません。ほとんどは良性なので無理して取る必要もありません。

 一方、粉瘤は、「皮膚から出たあぶらのかたまり」と言えなくはありませんが、本当の脂肪の塊ではありません。何らかの拍子に皮膚が袋状になり、その中に、皮膚の垢(あか)と皮膚の脂(皮脂)がたまって、しこりのようになったものです。表皮嚢腫(のうしゅ)とも言います。お粥(「アテロ」)に似たものが中に入っているということでアテローム(アテローマ)と呼ばれることもあります。垢と脂ですから、ちょっと臭いのが特徴です。これも通常、痛みはありませんし、ほとんどが良性なので無理して取る必要はないのですが、何らかのきっかけで細菌感染を起こすと痛みを生じ赤く腫れあがります。皮膚は痛みに敏感なのでかなり痛みは強いです。抗生物質と痛み止めを使い、膿が溜まっていればメスで切って外に出します。取りあえずはこれで良くなりますが、再発しないためには袋ごと取り除いた方がよいので、皮膚科や形成外科の先生に相談することになります。

 「私のおなか全体的な脂肪のかたまりは、この二つとも違う」と思われた方もおられたかもしれませんが、その話は別の機会にしましょう(笑い)。

(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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