千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さんに虐待を繰り返し、昨年1月に死亡させたとして傷害致死などの罪に問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、千葉地裁は懲役16年の判決を言い渡した。母は被告の暴行を止めなかったとして傷害ほう助罪で執行猶予付きの有罪判決が確定。法廷で虐待の模様を詳しく証言した。

 被告は「罪は争わない」とする一方、母の証言を次々と否定し、心愛さんに食事を与えなかったり、一晩中立たせたりしていないと訴えた。心愛さんが2017年11月に学校アンケートで「お父さんにぼう力を受けています」と書いたことについても「うそ」と言い切り「私が話したことは事実」と譲らなかった。

 裁判員から普段のしかり方を聞かれ、たたくなどの暴行は一度もなかったとも述べたが、判決は被告の言い分を「信用できない」とした上で「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨(せいさん)な虐待。心愛さんの人格や尊厳を全否定した」と強く非難。これまでの児童虐待事件と比べ重い量刑とした。

 この事件では児童相談所や市、学校などの対応ミスが重なり、救えたはずの命を救えなかったと厳しい批判が噴出。政府は児相の体制強化や親の体罰を禁止する立法などの対策を講じたが、その後も役所の不手際が目立つ。教訓を生かせているか。現場のほころびを絶えずチェックし、子どもの安全確保をより一層徹底させる必要がある。

 児童虐待は深刻さを増している。警察庁によると、全国の警察は昨年1年間に虐待事件で保護者ら2024人を摘発。被害に遭った18歳未満の子どもは過去最多の1991人に上った。心愛さんも含め54人が命を落とした。虐待の疑いがあるとして児相に通告したのは9万8222人。緊急性が高い場合などの保護は5553人で、12年と比べて3・4倍となり、初めて5千人を超えた。

 被害の8割以上を身体的虐待が占め、亡くなった54人は無理心中などを除いて、傷害致死が11人、殺人と保護責任者遺棄致死はそれぞれ6人、重過失致死2人だった。

 心愛さんを巡っては、児相がリスク判断を誤って一時保護を解除。市教育委員会の担当者は被告から威圧的な態度で迫られ、学校アンケートの写しを渡すなど失態が続き、状況を悪化させた。

 心愛さんの両親逮捕後の昨年2月、児童虐待防止に向けた関係閣僚会議で安倍晋三首相は「子どもの命を守ることを最優先に、虐待根絶に取り組んでほしい」と述べ、1カ月以内に全ての虐待事案の緊急安全確認を行うと表明。政府は保護者が児相など関係機関を避ける場合はリスクが高いと認識し、ためらわず一時保護するよう求めた。

 しかし2カ月後、札幌市の児相は虐待通告を受けたのに安全確認を怠った。警察から母子との面会に同行を要請されても夜間態勢がないことを理由に断り、昨年6月に2歳女児が両親による虐待の末に衰弱死するという最悪の結果を招いた。

 さらに昨年夏に愛媛県の職員が安全確認のため訪問した先で通告者の情報が記されたメモを相手に見られたり、今年2月には神戸市で真夜中に1人で児相を訪ねた小6女児が追い返されたりといった不始末も起きた。

 子どもが発するSOSに一般市民も含め周囲がきちんと対応しなければ、悲劇はまた起きる。(共同通信・堤秀司)

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