親族や第三者への事業引継ぎの相談に応じる「佐賀県事業引継ぎ支援センター」。本年度は2月末現在で、前年同月比43件増の164件の相談が寄せられ、9件増の24件が成約した=佐賀市白山

 少子高齢化に伴う後継者不足が課題となる中、佐賀県内の企業が関連する合併・買収(M&A)件数が増加している。事業承継のM&Aだけでなく、大手の傘下に入って、既存事業の強化や事業領域の拡大などを図る動きも高まっている。

 M&A助言のレコフ(東京)によると、同社が把握している2019年に県内企業が関わったM&A件数は12件で、統計を始めた1985年以降で最多となった。若楠自動車学校(佐賀市)の全株式を取得した大町自動車学校(大町町)のような県内企業同士での事例や、調剤薬局クオールホールディングス(東京)の子会社となったナチュラルライフ(佐賀市)、JR九州(福岡)の子会社となった萬坊(唐津市)など、県外の大手の傘下に入って、既存事業の強化や販路の拡大などを図る動きも目立った。

 14年の経済センサスなどによると、県内の法人格を持つ企業は2万749社で、経営者の60%が10年のうちに70歳を超える。東京商工リサーチが19年に実施した調査では、後継者が不在とする事業者率は55・6%で、年間で県内の約630社が廃業をやむなくされているという。県事業引継ぎ支援センターへの相談も増えている。

 中小企業のM&Aなどを手掛けるクロスダM&Aセンター佐賀本社(佐賀市)の石崎広文代表は「高齢化が加速する中で、事業承継の動きはますます増える」と指摘。その上で、県内企業同士のM&Aについて「技術や人、伝統の流出を防ぐことにもつながる」とみている。

 

佐賀市の独自施策 「事業承継」補助金利用ゼロ

 良質な事業を佐賀に残すことを目的として、佐賀市が本年度設けた事業承継を支援する独自の補助金が、年度末の3月になっても活用実績がない。問い合わせはあるものの、「着手金」など市が対象にした経費に合致する事例がなかった。市商業振興課は「使い勝手が良いように工夫し、活用を呼び掛けたい」として、新年度も補助金の総額を減らしつつ、事業を継続する予定。

 事業承継は国が中心となって取り組む。佐賀県も支援強化に乗り出す中、「佐賀市も何かできないか」として設けた。着手金などの経費と、引き継ぎ期間に二重となって負担が大きい前任経営者の人件費を対象にした。

 具体的には(1)親族承継や社員承継、M&Aが対象で、初期診断や課題分析、コンサルティングなどにかかる経費(2)譲渡企業の経営者だった人に支給する人件費。補助率は2分の1、上限は30万円とし、6件分の180万円の予算を組んだ。

 市には3月までに金融機関や司法書士らから、10件ほどの問い合わせが寄せられた。ただ、企業価値算定には別の専門家による無料相談が活用できたり、対象となる「着手金」が補助金対象外の「成功報酬」と混在したりするなど、対象事例とならなかったという。

 市商業振興課は「雇用や技術、ノウハウを引き継ぐことは地域経済の発展につながる。事業の譲渡に対する関心も高めながら、活用を促したい」としている。

 

 

がばい農園、木寺石油を譲受 新たな事業展開目指す

 東京や福岡など、県外事業者とのM&Aの事例が多い中、佐賀市の健康茶ネット販売業「がばい農園」は昨年末、木寺石油(武雄市)のM&Aに踏み切った。児玉浩三社長(37)は、約70人の従業員の雇用を維持しつつ「業界の凝り固まった考えを改めたい」と話す。

 がばい農園は、2009年に創業し、国産原料を使った健康茶をインターネット通販などで販売。19年4月にも、後継者を探していた仕入れ先の健康茶製造業「エイムわらビーハウス青葉園」(福岡市)を買収している。木寺石油の譲受は、経営者を探す同社から相談を受けた、仲介のクロスダM&Aセンター佐賀本社からの話を受けて、契約を結んだ。

 ガソリンスタンドの案内係の服装にスーツを導入したり、将来はカフェを併設したりと、新たな事業展開を目指す。児玉社長は「創業50年の会社の歴史を引き継ぎながらブレークスルーしていきたい」と語った。最終的な目標は「上場」で、「佐賀を活発にしたい」と意欲を見せている。

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