動物にとっては、食べることが戦いです。弱肉強食の世界では、たとえ同じ動物でも、すばやく賢いものが生き残ります。つまり、よく「噛(か)め」て、獲物をとれるものが勝ち残るのです。

 よく嚙むことと、賢さは無縁ではないようです。嚙むことは脳との連係プレーです。口に入った食べ物の情報を舌や歯で受け止めて、その情報を脳へ送り、脳から「強く嚙め」とか「弱く嚙め」といった指令がくだるキャッチボールです。つまり、嚙んでいる時は脳がよく働いているのです。

 また、嚙むことによる筋肉運動で、脳細胞の代謝活動が活発になることと、脳への血液循環も良くなって十分な酸素と栄養が運ばれるので、脳の発達を促進させるのです。

 塾のために食事の時間を削るより、よく嚙んでゆっくり食事をする方が脳のためには効果的です。

 さらに、いろいろな研究がなされています。私たちの脳は通常、睡眠状態と覚醒状態の間を行き戻りしています。たとえば、ガムなどを嚙むと覚醒の頻度が高くなり、頭がスッキリして、いわゆる「エネルギー覚醒の状態」になります。ラットやモルモットによる実験では、えさを嚙んだ後で脳の中の化学物質を測定してみると、コレシストキニンや線維芽細胞成長因子(FGF)などの記憶に関する物質が増加していることが分かっています。

 このように、私たち(動物)の行動学習にとって、脳の発達環境と、そこから受ける刺激は非常に重要です。(佐賀市 北村歯科医院院長 服部信一)

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