極細のボールペンと油彩マーカーによる細密さと色合いが印象的な「カメレオン」

次席に選ばれた佐賀県障がい者文化芸術展では作品とともに等身大の写真パネルも展示=昨年12月、県立美術館

「美術に障害のあるなしは関係ない」と語る加茂賢一さん=唐津市相知町の自宅

 「アール・ブリュット」の流れをくむ「障害者の文化芸術フェスティバル」(文化庁など主催)の出展作家に唐津市相知町の加茂賢一さん(43)が選ばれた。そううつ症のリハビリ療法で細密なペン画を描き始めて10年。「福祉」と「アート」をつなぐ創作活動は社会との関係性を回復する手だてともなっている。

 ペン先0.38ミリのゲルインクボールペンで皮膚のうろこを一個一個、線描した後、12色の油性マーカーで色を埋めていく。作品は動物をモチーフとしたものが多いが、中でも「カメレオン」は独自の描法が際立ち、創作中の姿が目に浮かんでくる。

 加茂さんは東京生まれで、小学2年の時、両親と一緒に郷里の相知町に戻ってきた。県立高校を中退し、仕事も長続きしない生活を送る中でそううつ症を発症。治療しながら自宅に引きこもるようになった。

 34歳の頃、唐津市内の病院に1年間入院し、作業療法で絵のサークルに入った。特に絵が好きだったわけではないが、「絵を描くことで自分の中のブランクを埋められるような気がした」と言う。園芸会社で働き始め、気持ちが安定してきたことも弾みとなった。

 現在は製薬会社で清掃業務を担当しながら、障害者の芸術活動を支援する佐賀市の社会福祉法人「はる」のグループ活動に参加。障害者アートのライブラリー「アートビリティ」の登録作家となり、東京五輪・パラリンピックを契機とした「障害者の文化芸術フェスティバル」のオープニングイベント(2月、滋賀県)では出展作家33人に選ばれるなど活動の場を広げる。

 今も月1回、診察を受けながら対外的に活動する中で「自分では(病気を)他者に言いづらいが、新聞にも取り上げられたことで地域の人から声を掛けられるようになった」と話す。次の目標は一般公募展への出品。「美術において障害のあるなしは関係ない」と言い、空き家になったままの自宅倉庫での個展も構想中だ。


アール・ブリュット 「加工されていない生(き)のままの芸術」を意味する。「障害者アート」というカテゴリーにとどまらず、美術の専門的な教育を受けていない人が自身の内側から湧きあがる衝動のままに表現した作品という、広義の芸術ジャンルを指す。

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