世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスによる感染拡大をパンデミック(世界的大流行)と表現できると判断した。東京五輪・パラリンピックは計画通り開催できるだろうか。見通しは厳しさを増す。

 欧州での感染拡大が速い。イタリアでは感染者が1万2千人を超えた。薬局や食料品店などを除き、全土でレストランをはじめ各種店舗を閉鎖するという。

 ドイツ、スペイン、フランスでの感染拡大も進む。この状況を見て、トランプ米大統領は自国での感染拡大の防止措置として、英国を除く欧州からの米国への入国を30日間停止すると発表した。

 暗雲はスポーツ界にも及ぶ。欧州域内の多くの大会と試合が中止、あるいは無観客での開催となっている。イタリアのサッカー強豪クラブでは選手の感染が確認された。

 米国ではNBAバスケットボールの選手で感染者が出て、リーグ全体の中断が決まった。大リーグでは、本拠地でのシーズン開幕戦を断念したチームもある。

 日本のプロ野球が開幕の延期を決め、サッカーのJリーグは中断期間をさらに延長した。春の訪れを告げる風物詩でもある選抜高校野球大会も史上初の中止が決まった。

 さて、東京五輪はこの深刻な問題の影響をどのように抑え、どのような対応が取れるだろう。大会組織委員会の理事の一人は、今月末の組織委理事会で大会延期の検討を提起する考えを表明した。

 五輪は世界中の市民が開催を楽しみにしている。努力を重ね、参加を心持ちにしている選手の夢、さらに開催国日本の市民の大きな期待を思えば、中止という最悪の事態は避けたい。その思いを関係者は共有しているはずだ。

 中止とならないために、延期を検討すべきだとの考えが組織委理事から出てきたのは、だから驚きではない。日本政府と東京都、組織委が協力して、開催準備をほぼ整えたこの時点で中止決定となれば、それはあまりにも理不尽だ。

 さまざまな五輪予選と五輪出場権が懸かる大会が世界各地で、中止もしくは延期されている。東京五輪への出場の展望が開けず、不安を抱く選手は多いに違いない。

 大会中止は、選手の五輪に出場する権利を奪い去ることにつながる。パンデミックのただ中で、出場権獲得の見通しが立たなくなった選手が続出しているのだから、受け入れる扉を閉じないための方策として延期は正しい選択だろう。

 国際オリンピック委員会(IOC)は五輪憲章で、五輪の開催を4年に1度と定めている。世界大戦による中止はあるが、大会の延期は過去一度もない。

 それでも、これは予測不能な突発的事態だ。平和の祭典でもある五輪の開催を組織の使命とうたうIOCは過去に例がなくても、憲章に縛られることなく延期を決定できるはずだ。

 4年間で数千億円にもなる世界各国からの放送権料と企業協賛金の収入があるIOCはそれぞれの契約により、大会を開催し、成功させる責務を負う。中止は万策尽きた後の選択だろう。

 IOCはまず、ことし秋への延期を、それが難しければ来年もしくは再来年への延期を、日本政府、東京都、大会組織委と協議し、具体的に検討すべきだ。(共同通信・竹内浩)

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