新型コロナウイルスの感染拡大で、経済活動の停滞に懸念が増している。その一つが大型スポーツ興行の相次ぐ延期、中止だ。不特定多数の人が集まる機会を減らし感染リスクを抑えるためには致し方ないが、入場料収入などの損失は計り知れず、財政面で窮地に陥る運営団体も少なくない。いつまで延期するのか、どういう状況になったら再開できるのか。先が見通せないだけに対応が難しい。

 日本高野連は11日、選抜高校野球大会の中止を決めた。1週間前に打ち出していた無観客での開催方針から一転した。安倍晋三首相が10日に大規模スポーツイベントなどの自粛、規模縮小を20日まで延長することを求めたことに加え、世界に感染が拡大する中で中止の決断を迫られた格好だ。

 プロスポーツ界も難しい状況にある。プロ野球は20日に予定していた公式戦開幕の延期を決め、サッカーJリーグも15日までとしていた試合の中断期間を3月いっぱいまで延長した。バスケットボールのBリーグ、卓球Tリーグ、ラグビーのトップリーグも新たな日程が見えず、頭を抱える。閉(へい)塞(そく)感は日に日に強まっているようだ。

 多くのプロスポーツ興行は入場料収入とスポンサー収入で支えられている。試合の延期により、予定していた入場料収入が得られない事態が続けば、死活問題になりかねない。Bリーグの大河正明チェアマンは「万が一、再開できないと、財政的に言えば3年間築き上げてきた全てが吹き飛ぶくらいのインパクト」と強い危機感を示していた。

 Jリーグの場合、延期された試合の多くは、集客が最も見込める休日昼の開催だった。新たな日程でホームゲームが平日ナイターに組み替えになると、数千人単位で集客が減り、相当額の収入源になる恐れがある。さらに、景気後退が深刻化すれば、スポンサー離れにもつながりかねない。

 Jリーグの村井満チェアマンは「純資産が非常に薄いクラブ、入場料収入など日銭をあてにしないといけないクラブについては、資金繰りなどの問題が起こらないように十分配慮する」という表現で、クラブ救済の考えに言及。それだけ事態は深刻ということだ。

 こうした中で、日本相撲協会は大相撲春場所を無観客での開催に踏み切った。Bリーグも11日に会見し、14日から無観客で再開すると発表。他のスポーツ興行でも今後は無観客試合の選択肢が現実味を帯びてこよう。しかし、無観客開催になれば入場料収入を失うだけでなく、試合会場でのグッズ収入などもゼロになる。「最後の最後、ほとんどあり得ない選択」(プロ野球・斎藤惇コミッショナー)と、ぎりぎりまで通常開催を模索する気持ちは理解できる。

 問題は感染の終息時期が予見できないということだ。ウイルスを抑え込めるかの瀬戸際において、試合を強行できる雰囲気にはほど遠く、マスクや消毒液の物資を整えることさえ難しい。世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言することになれば、スポーツどころの話ではなくなってしまうかもしれない。

 ただ、スポーツには希望をともす力があることを忘れてはいけない。ウイルスの抑え込みに成功して社会が平穏を取り戻したとき、球団やクラブが破綻していては元も子もない。試合開催可否の基準がない中で難しい判断になるが、主催者は絶妙なバランス感覚を発揮してほしい。今は歯がゆさをこらえ、見守るしかない。(市原康史)

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